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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/10/21

多疾患を抱える独居高齢者に対して、生活支援と医療継続を両立した訪問診療の実践

要点サマリー

認知症や慢性閉塞性肺疾患、高血圧など多疾患を抱える高齢女性に対し、在宅生活を維持するため訪問診療を導入した。妄想性障害など心理的な不安定さが見られたが、医師・精神科・家族の多職種連携により安定した在宅療養が実現した。ケアマネジャーにとっては、遠方家族との情報共有体制を整え、精神的ケアと生活支援を両立させることの重要性を示唆するケースである。


基本情報

年齢・性別:95歳 女性
居住エリア:名古屋市瑞穂区
家族構成:本人独居。キーパーソンは尾張旭市在住の妹。夫側の甥の嫁もサポート可能。

保険・福祉情報

後期高齢者医療保険:1割
介護保険:要介護2(1割)

診断名

認知症、高血圧、腰部脊柱管狭窄症、慢性閉塞性肺疾患、両側大腿骨頚部骨折術後

導入の背景

長年にわたり肺癌手術や骨折などの既往があり、複数疾患を抱えながら通院を継続していた。しかし、身体機能の低下と通院困難が重なり、ケアマネジャーを通じて訪問診療を導入することとなった。
家族支援が限定的な中でも、地域資源を活用しながら在宅療養を支える体制を構築した。

介入内容と経過

初診後は状態の安定が見られたが、発熱と体動困難を契機に入院。精査の結果、誤嚥性肺炎および多発転移が判明した。自宅療養は困難となり、入院治療を経てナーシングホームに移行。その後、施設にて看取りとなった。
一連の経過を通じて、本人の生活意向を尊重しつつ、医療と介護の連携により最適な環境選択を支援した。

医療対応の詳細

呼吸器疾患や転移性病変への対応を中心に、症状緩和と感染管理を重視した。通院困難な状況下でも、適切な医療判断と早期介入により、急変時のリスクを最小限に抑えた。

支援のポイント

遠方に住む家族への連絡体制を整え、情報共有を円滑に行ったことが在宅継続の鍵となった。また、本人の生活リズムや認知機能に配慮した関わりを続けることで、信頼関係を構築できた。
ケアマネにとっては、多病併存・家族支援制限下での意思決定支援モデルとして有用である。

考察

このケースは、医療依存度が高い高齢者に対し、家族支援が限定的でも地域多職種連携により生活の質を保てることを示している。訪問診療が“医療提供の場”に留まらず、“暮らしを支える媒介”として機能した好例である。


付記情報

・疾患種別:慢性疾患/悪性疾患既往
・病名:認知症、高血圧、慢性閉塞性肺疾患、腰部脊柱管狭窄症、骨折術後
・医療処置:該当なし
・エリア:名古屋市瑞穂区
・生活環境:独居
・医療負担割合:1割
・専門医介入:内科・精神科連携
・公費負担医療:該当なし
・障害者手帳・認定情報:なし