在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/10/21
妄想性障害を背景に在宅生活を継続したANCA関連血管炎患者の訪問診療支援
要点サマリー
ANCA関連血管炎による全身状態低下と妄想性障害を併発した独居高齢女性の症例である。在宅生活維持には内科管理だけでなく精神症状への継続的対応が不可欠であり、信頼関係の形成と家族連携、定期採血による病状モニタリングが重要であった。ケアマネジャーとしては、医療・福祉・家族支援を多面的に統合するケアマネジメントが求められるケースである。
基本情報
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年齢・性別:86歳・女性
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居住地:名古屋市港区
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同居状況:独居
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キーパーソン:長女(県内在住)
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その他家族:長男は精神科入院中で支援困難
保険・福祉情報
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医療保険:後期高齢者医療保険(1割負担)
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介護保険:要介護2(1割負担)
診断名
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妄想性障害
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ANCA関連血管炎
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糖尿病
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脂質異常症
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高血圧症
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脊柱管狭窄症
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血小板増加症
導入の背景
以前は自立して生活していたが、全身倦怠感を契機に活動性が低下し、入院精査によりANCA関連血管炎と診断された。退院後も腎機能悪化や高カリウム血症があり医療的支援が必要であったが、本人は入院を拒否。独居かつ精神症状による生活不安があるため、地域での支援体制構築を目的に訪問診療が導入された。
介入内容と経過
訪問診療開始後は内科管理に加え、妄想性障害に伴う不安定な精神症状への対応が必要であった。精神科医も訪問対応に加わり、医療的モニタリングとして定期採血を実施しながら在宅療養を継続した。侵入被害妄想により玄関や窓を過剰に施錠するなどの行動が見られたが、長期的関わりにより徐々に信頼関係を構築し支援環境を安定化させた。
医療対応の詳細
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内科・精神科の併診による訪問診療
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ANCA関連血管炎の治療経過観察と定期採血
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服薬管理支援
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精神症状に対する継続的評価と対応
支援のポイント
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精神疾患を背景としたケースでは「不安の構造」を理解し、急性対応よりも関係継続を重視する支援が有効
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長女への情報共有を徹底し、家族支援を並行して実施
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医療・介護の役割整理を図り、生活不安を軽減する支援体制の構築が重要
考察
精神疾患と難病が併存するケースでは、医療依存度だけでなく生活の不安定性も高くなる傾向がある。訪問診療による医療支援だけでなく、家族支援や見守り体制の確保を含めた包括的な支援が不可欠である。本症例は、医療と精神支援の連携が在宅継続に寄与した事例であり、地域連携の意義を示唆している。
付記情報
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疾患種別:難病・精神疾患
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病名:ANCA関連血管炎、妄想性障害ほか
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医療処置:該当なし
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エリア:名古屋市港区
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生活環境:独居、家族支援は限定的
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医療負担割合:1割
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専門医介入:内科・精神科併診
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公費負担医療:該当なし
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障害者手帳・認定情報:なし