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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/10/21

前立腺がん多発骨転移と認知症を併せ持つ独居高齢者への訪問診療支援

基本情報

76歳 男性/名古屋市港区在住
家族構成:独居(キーパーソンは神奈川県在住の姪)
家族背景:妻は逝去、兄弟は存命だが遠方在住

保険・福祉情報

後期高齢者医療保険 1割負担
要介護2(介護保険 1割負担)

診断名

前立腺がん
多発骨転移
認知症(HDS-R 5/30)

導入の背景

前立腺がんに対して加療を継続していたが、認知症の進行により通院が困難となったことを契機に訪問診療が導入された。泌尿器科からの継続治療を希望していたが、外来通院が成立しなくなり、地域での在宅管理体制が必要と判断された。

介入内容と経過

初診時、疼痛訴えはなく、在宅での生活は比較的安定していた。アルコール摂取も見られたが、生活リズムは保持されていた。認知症の影響により服薬管理や受診調整は困難であったため、訪問診療とケアマネジャーが連携し生活支援体制を構築した。途中、転倒による大腿骨骨折を生じ、人工骨頭置換術のため入院したが、退院後は家族の希望により神奈川県へ転居。地域包括支援体制の引継ぎを行い、当院での訪問診療は終了した。

医療対応の詳細

・がん疼痛のモニタリング(疼痛訴えは経過を通じて軽度)
・服薬管理支援(内服継続の調整)
・多職種との情報共有による生活支援
・急性期入院後の地域連携(転院・転居対応)

支援のポイント

・認知症を併存するがん患者では、服薬・通院管理の生活支援体制が不可欠である
・キーパーソンが遠方在住であっても情報共有と意思決定支援をこまめに実施することで在宅継続が可能
・地域包括支援センターやケアマネジャーとの連携によりリスクを可視化し支援を継続
・転居時には担当医・ケアマネ間での連携引継ぎを早期に調整することが重要

考察

独居・遠方家族・認知症併存という在宅療養継続が困難となり得る条件が多重に存在した症例である。しかし、多職種連携により一定期間は在宅療養の継続が可能となった。がん患者において治療継続だけでなく生活支援の視点を組み合わせる重要性を示す事例である。

付記情報

・疾患種別:がん/慢性期
・病名:前立腺がん、多発骨転移、認知症
・医療処置:該当なし
・エリア:名古屋市港区
・生活環境:独居
・医療負担割合:1割
・専門医介入:泌尿器科
・公費負担医療:なし
・障害者手帳・認定情報:なし