在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/10/21
自宅を家族が強く希望した高次機能障害患者に対する在宅支援
■ 要点サマリー
ラクナ梗塞後の高次機能障害・右片麻痺を抱えた高齢患者が老健退所後に在宅療養へ移行。家族の強い希望を背景に在宅支援が開始されたが、失語による意思疎通の困難と介護負担が課題であった。リハ専門職や訪問診療との連携により、生活再構築と継続支援体制を整備した事例である。
■ 基本情報
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年齢・性別:90歳 女性
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居住地:名古屋市千種区
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家族構成:本人・長男との二人暮らし(長女は東京在住、支援困難)
■ 保険・福祉情報
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後期高齢者医療保険:1割
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介護保険:要介護5(区分変更を経て認定)
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福祉給付金資格者証:あり
■ 診断名
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ラクナ梗塞
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高脂血症
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甲状腺機能低下症
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卵巣癌(既往)
■ 導入の背景
小脳出血および脳梗塞の既往があり、右片麻痺・失語・高次機能障害が残存。自宅退院が困難と判断され老健に入所していたが、家族(特に次男)の強い希望により退所。在宅療養への移行に伴い訪問診療を導入した。
■ 介入内容と経過
導入当初より、意思疎通困難やADL低下により支援体制整備が急務となった。患者は老健退所前より在宅を強く希望していた一方で、身体機能の低下とコミュニケーション障害により生活リスクが高い状態であった。訪問診療はまず全身状態の安定化と服薬管理の調整を実施。併せて地域包括支援センターと連携し、介護保険サービスの早期導入を図った。
■ 医療対応の詳細
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右片麻痺に伴うADL障害へのリハビリ支援
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失語・高次機能障害に対する言語療法士関与
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甲状腺機能低下・高脂血症の薬物治療管理
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健康状態モニタリングのための定期訪問
■ 支援のポイント
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家族支援を重視した方針調整
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訪問リハビリ・訪問看護との多職種連携
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コミュニケーション障害への代替手段活用(ジェスチャー・短文カードなど)
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退所直後の生活不安に対する早期支援と安全管理
■ 考察
本症例は、医学的には施設療養が適すると判断されていたが、患者本人と家族の在宅希望が強く、意思を尊重した支援方針を構築した点に特徴がある。高次機能障害や失語を抱えるケースでは、医学的視点のみならず、生活再構築力や家族の介護体制、意思決定支援のプロセスが重要であることを示している。
■ 付記情報
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疾患種別:脳血管疾患
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病名:ラクナ梗塞ほか
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医療処置:該当なし
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エリア:名古屋市千種区
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生活環境:自宅療養・家族同居
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医療負担割合:1割
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専門医介入:神経内科(外来継続)
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公費負担医療:福祉給付金資格者証
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障害者手帳・認定情報:記載なし(失語・片麻痺あり、今後検討余地あり)