要点サマリー
上行結腸癌の術後肝転移により通院継続が困難となった症例であるが、本人意思を尊重し自宅療養を希望。CVポート管理と症状緩和を中心に訪問診療を継続している。介護保険未申請で支援体制が脆弱であったが、早期に訪問看護を導入し在宅療養を維持している点が特徴である。ケアマネジャーへの示唆としては、医療依存度が高いが在宅希望が明確なケースでは、早期のサービス調整と家族支援体制の設計が重要である。
■ 基本情報
80歳代女性。名古屋市千種区在住。独居でありキーパーソンは別居中の息子である。
■ 保険・福祉情報
生活保護を受給しているが、介護保険は未申請である。
■ 診断名
上行結腸癌、肝転移
■ 導入の背景
結腸癌手術後に肝転移を認め、CVポート造設の上で化学療法を実施していたが、全身状態低下により化学療法は中止となった。胆管ステント留置後に退院となったが、体力低下と通院困難があり訪問診療を希望するに至った。当初は本人が訪問診療に対して拒否的であったが、面談により在宅療養の必要性と意義を説明し、同意を得た。
■ 介入内容と経過
初診後は全身状態が不安定であり、自宅療養継続の可否が課題となった。家族には入院加療の選択肢も提示したが、本人の強い希望により在宅療養を継続する方針とした。その後、食事摂取は徐々に改善し内服も可能となり、現在は定期訪問による体調管理を継続している。
■ 医療対応の詳細
CVポートを管理しつつ、疼痛や倦怠感などの緩和ケアを提供している。胆管ステント留置後であり黄疸・肝機能の変動にも留意し定期的な評価を実施している。
■ 支援のポイント
在宅療養の希望を尊重しながらも、生活基盤の整備が課題であるため、介護保険申請や福祉制度の活用を早期に進める必要がある。病状説明を繰り返し行い、本人と家族の意向を確認しながら意思決定支援を継続している。
■ 考察
本症例は医療依存度が高い進行癌症例であり、在宅療養の継続には医療と生活支援の統合的支援が不可欠であった。病状や予後を丁寧に説明しながら、本人の希望を実現する支援体制を構築することが重要である。訪問看護の早期導入は在宅継続に寄与したと考える。
■ 付記情報
・疾患種別:消化器癌(進行期)
・病名:上行結腸癌、肝転移
・医療処置:CVポート
・エリア:名古屋市千種区
・生活環境:独居(息子が支援)
・医療負担割合:生活保護
・専門医介入:化学療法後(外来フォロー終了)、訪問診療へ移行
・公費負担医療:生活保護
・障害者手帳・認定情報:該当なし