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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/10/16

直腸癌・多発肝転移 自然経過を選び、自宅で最期を迎えたケース

■ 基本情報

年齢・性別:90歳・男性
住所:名古屋市千種区
家族構成:本人・妻の2人暮らし。長男夫妻が近隣に居住し支援している。

■ 保険・福祉情報

後期高齢者医療保険(2割負担)
介護保険:要介護4(1割負担)
公費:なし

■ 診断名

直腸癌(多発肝転移を伴うStage IV)

■ 導入の背景

2023年1月27日、血便を主訴にT医療センターを受診。
1月31日の下部消化管内視鏡検査にて大腸ポリープを切除し、同時に下部直腸に腫瘍を認めた。血便の原因はこの腫瘍によるものと判断された。
家族と相談のうえ、年齢や体力面を考慮し手術は施行せず、緩和的治療(BSC)を選択した。
その後も下血と貧血を繰り返し、11月の再入院時に肝転移を確認しStage IVと診断。退院後、「自宅で最期まで過ごしたい」という本人・家族の希望を受け、当院訪問診療を導入した。

■ 介入内容と経過

2023年11月14日、Hb7.2g/dl。輸血は施行せず自然経過を見守る方針を家族と共有。
12月までは比較的安定して自宅で過ごすことができたが、翌年1月に入り嘔気や腎不全が進行。
家族と主治医で話し合い、点滴等の延命処置を行わない方針にて合意した。
2024年1月8日、自宅にて妻と長男夫妻に見守られながら穏やかにご逝去された。

■ 医療対応の詳細

・輸血・点滴等の延命処置は行わず、自然経過を尊重。
・主治医と家族間での意思確認を丁寧に実施。
・訪問看護と連携し、症状緩和と家族支援を並行して実施。

■ 支援のポイント

・「何を行わないか」を明確に合意形成したことが、安定した在宅療養につながった。
・家族が主体的に意思決定に関与し、信頼関係を維持したまま看取りを実現。
・医療チームが「延命」よりも「安らかな時間」を整える役割を果たした。

■ 考察

本症例は、治療よりも「最期の時間の質」を重視した在宅緩和ケアの典型例である。
家族の理解と医療チームの伴走により、医療的介入を最小限に抑えながらも、本人の尊厳と希望を実現できた。

■ 付記情報

・疾患種別:悪性腫瘍
・病名:直腸癌(多発肝転移)
・医療処置:なし
・エリア:名古屋市千種区
・生活環境:本人+妻(近隣に長男夫妻)
・医療負担割合:2割
・専門医介入:T医療センター(初期診断・治療)
・公費負担医療:なし
・障害者手帳・認定情報:なし