在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/10/10
疼痛コントロールを軸に在宅生活の継続を支援した高齢女性のケース
基本情報
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年齢・性別:94歳・女性
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居住地:名古屋市名東区
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家族構成:本人・長女・長女の夫の3人暮らし(夫は既に死別)
保険・福祉情報
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医療保険:後期高齢者医療保険(1割負担)
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介護保険:要介護2(1割負担)
診断名
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脊椎圧迫骨折
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両膝変形性関節症
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骨粗鬆症
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慢性腎臓病
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慢性心不全
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貧血
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認知症
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高血圧症
導入の背景
本人は高血圧・脂質異常症で近医に通院中であったが、2017年に上行結腸癌を発症しA病院で手術を受けた。高齢のため術後化学療法は施行せず。その後、入院を契機に認知機能が低下し、日中は臥床傾向となった。HDS-Rは19点であり、服薬管理は長女が担っていた。さらに脊椎圧迫骨折をきっかけに通院困難となり、在宅医療導入に至った。
介入内容と経過
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訪問診療を開始し、疼痛コントロールを優先。
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本人の生活目標として「痛みが和らぎ座位保持が可能となればデイサービスに行きたい」という意向があり、長女もこれを希望。
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チームで意向を共有し、内科的管理に加え訪問マッサージを導入。
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認知症進行はあるものの、痛みのコントロールにより生活の安定を目指した。
医療対応の詳細
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脊椎圧迫骨折に伴う疼痛管理を中心に実施。
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骨粗鬆症や関節症への加療は保存的対応。
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慢性疾患(高血圧・心不全・腎機能障害等)については薬剤調整を継続。
支援のポイント
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「疼痛コントロール」を具体的な生活目標(デイサービス参加)と結びつけることで、本人・家族双方の意欲を高められた。
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チーム内で本人の認知症特性や生活意向を共有することにより、過剰な医療介入に偏らず生活支援を優先できた。
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家族が服薬管理を担い、医療チームが痛みや全身管理を支える体制を構築できた。
考察
本症例は、進行する認知症や複数の慢性疾患を抱える高齢者に対して、生活機能の維持を主眼に在宅医療を展開したケースである。医療の目的を「延命」ではなく「生活の質の向上」に据え、疼痛コントロールを軸に多職種連携を行うことで、本人・家族が安心して自宅療養を継続できる体制を作れた点は示唆的である。
付記情報
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疾患種別:整形外科疾患、循環器疾患、腎疾患、認知症
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病名:脊椎圧迫骨折、変形性膝関節症、骨粗鬆症、慢性腎臓病、慢性心不全、貧血、認知症、高血圧症
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医療処置:なし
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エリア:名古屋市名東区
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生活環境:長女夫婦との同居
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医療負担割合:1割
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専門医介入:あり(外科・内科)
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公費負担医療:福祉給付金なしの記載(追加要確認)
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障害者手帳・認定情報:記載なし