在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/10/10
感染症治療後も複数疾患を抱える高齢男性、褥瘡管理を含め在宅療養を継続できたケース
基本情報
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年齢・性別:89歳・男性
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居住地:尾張旭市
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家族構成:本人と妻の2人暮らし。長男がキーパーソンで、2世帯住宅2階に長男家族が同居。
保険・福祉情報
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医療保険:後期高齢者医療保険(1割負担)
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介護保険:要介護4(1割負担)
診断名
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MSSA菌血症
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化膿性脊髄炎
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腸腰筋膿瘍
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糖尿病
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慢性心不全
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右踵壊死
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肺がん疑い
導入の背景
2023年6月16日、高CRP(28.34)のためT病院に入院。検査の結果、MSSA菌血症・化膿性脊髄炎・腸腰筋膿瘍と診断され、抗生剤点滴で病状は軽快した。しかし下肢廃用が進行し離床困難となった。8月10日にリハビリ目的でS病院に転院しADL改善を目指したが、自立は困難であった。
9月22日には右踵の黒色壊死組織を切除し、その後イソジンシュガーで処置を継続。T病院から炎症反応が陰性化するまで抗生剤を継続するよう依頼があった。退院後は通院困難となり、2023年10月8日より訪問診療を導入した。
本人と家族はT病院での診察継続も希望しており、数か月に1度の通院を併用しながら訪問診療を受ける体制となった。
介入内容と経過
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抗生剤治療の継続と全身状態のフォローアップ。
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右踵褥瘡の局所処置を実施。悪化時には訪問頻度を週1回に増加。
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現在は症状が安定し、在宅療養を継続中。
医療対応の詳細
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抗生剤継続(炎症反応陰性化まで)
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褥瘡処置(壊死切除後、イソジンシュガー使用)
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定期採血と全身状態のモニタリング
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T病院との外来フォローを併用
支援のポイント
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複数疾患を抱え不安定な状態でも、病院と訪問診療の連携により切れ目のない医療提供が可能となった。
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家族(長男夫婦)の介護力が支えとなり、在宅療養の継続を実現。
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状態に応じて訪問頻度を柔軟に変更することで、悪化を最小限に抑えることができた。
考察
本症例は、感染症治療後に複数の重複疾患を抱える高齢者が在宅療養へ移行したケースである。訪問診療と専門病院の外来を組み合わせることで、急変リスクを抑えつつ在宅での療養を継続できた。特に褥瘡管理は在宅医療での大きな課題だが、柔軟な訪問体制と家族の協力により在宅生活を維持できた点は、今後の在宅支援において重要な示唆を与える。
付記情報
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疾患種別:感染症・循環器疾患・代謝疾患・整形外科疾患・腫瘍疑い
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病名:MSSA菌血症、化膿性脊髄炎、腸腰筋膿瘍、糖尿病、慢性心不全、右踵壊死、肺がん疑い
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医療処置:褥瘡処置
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エリア:尾張旭市
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生活環境:妻との2人暮らし、長男家族が同居支援
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医療負担割合:1割
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専門医介入:T病院
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公費負担医療:記載なし
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障害者手帳・認定情報:記載なし