在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/09/30
脊髄小脳変性症を抱える高齢女性、自宅生活から施設入所へ移行したケース
基本情報
-
年齢・性別:85歳・女性
-
居住地:名古屋市東区
-
家族構成:本人独居。夫は他界。長男・長女が市内在住(KPは長男)。
保険・福祉情報
-
医療保険:後期高齢者医療保険(1割負担)
-
介護保険:要介護4(1割負担)
-
公費:丸福あり
診断名
-
脊髄小脳変性症(SCA31)
-
陳旧性脳梗塞
-
高血圧症
導入の背景
2010年頃よりふらつきが出現し、2012年からは構音障害も加わった。2014年にA病院神経内科で脊髄小脳変性症と診断され、難病申請済み。その後、右放線冠の脳梗塞を発症。複数の病院で神経内科診療を受け、2020年には遺伝子検査でSCA31に矛盾しない所見を確認。
コロナ禍以降、通院困難が顕著となり、当院への訪問診療依頼があった。
家族からは「独居での生活には限界がある」との認識があり、施設入所を勧めてきたが、本人はできる限り自宅生活を継続したい意欲を持っていた。当院はその意向を尊重し、家族と合意のうえで訪問診療を開始した。
介入内容と経過
-
2022年から訪問診療を開始し、自宅での生活をサポート。
-
2023年7月頃まで在宅生活を続けたが、屋内転倒が頻回となり、本人も施設入所を現実的に考えるようになった。
-
本人は「翠香邸」を見学。https://www.chikusa.or.jp/suikoutei/ ここなら自分らしい生活ができると安心し入所を決意。7月より入所となった
-
入所後も当院の訪問診療を継続。2023年12月に脳出血を発症し、入院ののちご逝去された。
医療対応の詳細
-
神経内科フォロー継続
-
脳梗塞再発予防
-
高血圧症コントロール
-
転倒リスク評価と生活環境調整
支援のポイント
-
本人の「自宅で暮らしたい」という強い希望に寄り添いつつ、転倒増加を契機に施設入所へ自然に移行できたこと。
-
家族(特に長男)の理解と調整により、本人が納得感を持って施設生活へ移れた点が重要であった。
-
在宅と施設の双方で訪問診療を継続し、切れ目のない医療を提供できたことが安心につながった。
考察
本症例は、進行性の神経疾患を抱える高齢患者に対し、自宅生活から施設入所へと移行する過程を支援したケースである。本人の生活意欲と家族の介護力のバランスを尊重し、段階的に住まいを移行することで、最期まで本人らしさを保つことができた。
付記情報
-
疾患種別:神経疾患・循環器疾患
-
病名:脊髄小脳変性症、脳梗塞、高血圧症
-
医療処置:特記なし
-
エリア:名古屋市東区
-
生活環境:独居から施設入所へ移行
-
医療負担割合:1割
-
専門医介入:あり(神経内科)
-
公費負担医療:丸福あり
-
障害者手帳・認定情報:難病申請済