在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/09/30
慢性心不全と皮膚潰瘍を抱える脳梗塞後患者、通院困難により訪問診療へ移行したケース
基本情報
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年齢・性別:86歳・女性
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居住地:名古屋市東区
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家族構成:本人・長男家族の4人暮らし(KPは長男)、次男は他県在住
保険・福祉情報
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医療保険:後期高齢者医療保険(1割負担)
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介護保険:要介護3(1割負担)
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公費:福祉給付金あり
診断名
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脳梗塞後遺症
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心房細動
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左下腿皮膚潰瘍
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慢性心不全
導入の背景
2019年6月に右下肢蜂窩織炎で入院中、左半身麻痺を発症。血栓除去術施行により改善し、退院後は外来通院を継続。皮膚潰瘍についてはA病院、その後K皮膚科で外来加療が続けられていた。
2019年12月には慢性心不全の増悪で入院、退院後は安定していたが、通院介助を担う長男の負担が増大。これを契機に、2022年10月より当院訪問診療へ移行することとなった。
介入内容と経過
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初診後は在宅での全身管理を行いながら、皮膚潰瘍についてはK皮膚科と連携。
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心不全症状の増悪予防を目的に、日常生活での観察点(体重変動、下肢浮腫、息切れ)を家族と共有。
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必要時にはレスパイト入院を活用し、在宅と入院を柔軟に行き来する体制を整えた。
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現在もご自宅で療養を継続中。
医療対応の詳細
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脳梗塞後の再発予防管理
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心房細動に対する抗凝固薬調整
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慢性心不全の内科的管理(利尿剤含む)
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皮膚潰瘍に対する外用処置(K皮膚科と併診)
支援のポイント
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在宅と入院を柔軟に使い分ける「レスパイト利用」により、家族の介護負担を軽減できた。
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専門診療科(皮膚科)との連携を途切れさせずに在宅診療に移行した点が、患者の安心感につながった。
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通院介助に限界を感じていた家族の意向を踏まえた訪問診療導入は、在宅療養の継続可能性を高める結果となった。
考察
高齢患者における多疾患併存例では、在宅と外来・入院を併用しながら適切に役割分担を行うことが重要である。本症例は、家族介護の限界を補いながらも専門医療を継続できる「地域連携型の在宅診療モデル」の有効性を示す事例といえる。
付記情報
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疾患種別:循環器疾患・皮膚疾患
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病名:脳梗塞、心房細動、左下腿潰瘍、慢性心不全
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医療処置:なし
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エリア:名古屋市東区
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生活環境:長男家族との同居
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医療負担割合:1割
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専門医介入:あり(皮膚科)
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公費負担医療:福祉給付金あり
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障害者手帳・認定情報:記載なし