在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/09/30
兄弟間で介護方針が分かれる中、入退院を経て在宅継続を模索したケース
基本情報
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年齢・性別:95歳・女性
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居住地:名古屋市中区
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家族構成:本人独居。長男は道向かいに在住、次男は敷地内同居、三男は他県在住。キーパーソンは次男。
保険・福祉情報
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医療保険:後期高齢者医療(1割負担)
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介護保険:要介護4(1割負担)
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公費:福祉給付金あり
診断名
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老衰状態
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関節リウマチ
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右下肢虚血
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喘息
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高血圧症
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狭心症
導入の背景
2022年5月、倦怠感が強く体動困難となりE病院へ救急搬送され入院。右下肢虚血が認められたが血栓除去術の適応はなく、ヘパリン点滴で改善。入院中の経過を踏まえ、自宅退院に際し当院へ訪問診療依頼があり、5月28日に初診となった。食事摂取にはムラがあり、年齢的にも看取り方向を見据えた説明を家族へ行った。
しかし初診から4日目に再度入院。次男は「入院後に落ち着いたら在宅へ」と希望した一方で、長男は「夜間対応は家族では限界」とし施設入所も検討したいと発言。兄弟間で意向が分かれる中で入院となり、今後の生活方針を整理することが課題となった。
介入内容と経過
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初診後まもなく体調悪化し入院、その後家族の希望により転院。
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6月初旬には次男の強い希望で自宅退院。
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10月末に再度入院し、12月退院後はロングショートステイを利用しながら在宅療養を継続。
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ご兄弟の間での意見調整を図りながら療養方針を模索したが、最終的に当院での介入は終了。
医療対応の詳細
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褥瘡処置
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在宅酸素療法
支援のポイント
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家族間の意向の相違が大きく、在宅継続か施設入所かの方針整理が課題であった。
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キーパーソンである次男の強い希望と、長男の介護負担に対する不安の両立が困難であった。
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医療側は病状の進行を見据え、看取りも含めた選択肢を早期に提示することが求められた。
考察
本症例は、患者本人の高齢と複数疾患の背景に加え、家族間の介護方針の相違が在宅療養継続の大きな課題となったケースである。訪問診療が関わることで、短期的には在宅療養を実現できたが、家族内での意思統一や介護力の評価を怠らないことが重要である。家族支援を含めた包括的な支援体制の構築が、最期までの療養の質を左右することが示された。
付記情報
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疾患種別:老衰・循環器・膠原病関連
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病名:老衰状態、関節リウマチ、右下肢虚血、喘息、高血圧症、狭心症
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医療処置:褥瘡処置、在宅酸素療法
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エリア:名古屋市中区
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生活環境:独居、近隣に長男・次男が居住
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医療負担割合:1割
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専門医介入:あり(E病院、S医療センター)
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公費負担医療:福祉給付金あり
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障害者手帳・認定情報:記載なし