在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/09/30
高齢肺がん患者、高Ca血症を伴いながらも自宅で最期を迎えられたケース
基本情報
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年齢・性別:95歳・男性
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居住地:名古屋市中川区
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家族構成:本人と長男の二人暮らし。長男は中村区に住んでいたが介護のため一時同居。変形性膝関節症で介護力は低い状況。次男は蟹江町在住(膀胱がんで入院歴あり)。長女は岡崎在住で週1~2回訪問。
保険・福祉情報
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医療保険:後期高齢者医療保険(1割負担)
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介護保険:要介護3(1割負担)
診断名
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肺がん
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高Ca血症
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足関節炎
導入の背景
2021年8月にE病院へ入院。足関節炎・偽痛風疑いでの入院時に左肺結節を指摘され、肺がんが疑われたが高齢のため精査・加療は行わず経過観察となった。その後、原発巣は増大し腫瘍マーカーも上昇。高Ca血症による症状(食思不振・ADL低下)が出現し、ゾメタ投与で改善が得られたが、通院継続が困難となり訪問診療導入が検討された。2022年5月14日より当院訪問診療を開始。
介入内容と経過
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定期訪問でバイタル確認と点滴実施(水分摂取は経口で1日500ml程度、補助的に点滴を併用)。
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定期訪問時には笑顔で会話できるなど比較的落ち着いた状態を維持。
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2022年6月10日、訪問看護から「せん妄あり、両上肢を動かしている」と情報共有あり。薬剤で対応。
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同日夜、自宅で永眠された。
医療対応の詳細
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点滴による補助的水分管理
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高Ca血症へのゾメタ投与(入院時)
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せん妄出現時の薬物対応
支援のポイント
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家族構成が複雑であり、介護力に限界がある中でも在宅療養を継続できた。
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長女の定期訪問や長男の同居によるサポートが、自宅療養の継続を支えた。
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定期訪問に加え、訪問看護との情報共有と即応が、最期までの在宅療養を可能にした。
考察
高齢・末期がん患者において、積極的治療が難しい場合でも「本人・家族の希望」と「医療チームの伴走」によって在宅療養は成立する。特に本症例では、高Ca血症による体調変動や介護力不足といった課題を抱えながらも、点滴・訪問看護・家族支援の組み合わせで最期まで自宅での生活が可能となった。
付記情報
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疾患種別:がん・終末期
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病名:肺がん、高Ca血症、足関節炎
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医療処置:点滴
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エリア:名古屋市中川区
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生活環境:長男と二人暮らし、長女が週1~2回訪問
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医療負担割合:1割
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専門医介入:あり(E病院、腫瘍科・整形外科)
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公費負担医療:なし
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障害者手帳・認定情報:なし