在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/09/30
通院困難となった非結核性抗酸菌症患者、訪問診療で最期まで支えたケース
基本情報
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年齢・性別:90歳・男性
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居住地:名古屋市昭和区
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家族構成:本人独居。長女は隣に在住(夜8時帰宅)、長男・次女は別居
保険・福祉情報
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医療保険:後期高齢者医療保険(3割負担)
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公費:丸福
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介護保険:要介護1(3割負担)
診断名
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非結核性抗酸菌症
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心房頻拍後(カテーテルアブレーション後)
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房室ブロック(リードレスペースメーカー留置)
導入の背景
2019年に発熱・呼吸困難でA病院呼吸器内科に入院し、非結核性抗酸菌症と診断。抗菌薬不応性でステロイド加療を受け、再燃を繰り返しつつ治療を継続。2020年には結核を発症し、9か月間の治療で治癒に至った。
2021年には発作性心房頻拍に対してカテーテルアブレーションを施行。しかし術後に間欠的房室ブロックを認め、リードレスペースメーカー(MICRA)を植え込み。以降も起立時ふらつき・食後失神が続き、内服治療を継続していた。
脚力低下により通院困難となり、2022年12月より当院訪問診療を開始した。
介入内容と経過
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定期訪問診療により心不全兆候、呼吸状態、服薬状況をフォロー。
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ペースメーカー留置後の経過観察を継続。
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2023年2月、長女より「経口摂取困難・夜間せん妄」の連絡があり、緊急往診を実施。そのままちくさ病院へ搬送。
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2023年4月、入院中に永眠された。
医療対応の詳細
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ステロイド加療歴あり
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ペースメーカー留置後の管理
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心不全兆候・循環器リスクのフォロー
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緊急往診と搬送対応
支援のポイント
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独居ながら隣家の長女がキーパーソンとして関与し、緊急時の対応が可能であったことが支えとなった。
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通院困難例では訪問診療が疾患管理の要となり、最期までの医療的安心を提供できた。
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生活環境と家族支援の実情を把握し、臨機応変に対応することが重要である。
考察
非結核性抗酸菌症は慢性経過をとり、長期的な通院が必要となるが、高齢者にとっては通院自体が大きな負担となる。在宅医療の導入により、疾患の再燃や合併症に備えながら安心した療養環境を整えることが可能である。本例は「通院困難が契機となる訪問診療導入」の典型例といえる。
付記情報
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疾患種別:呼吸器疾患、循環器疾患
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病名:非結核性抗酸菌症、心房頻拍後、房室ブロック
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医療処置:ペースメーカー管理
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エリア:名古屋市昭和区
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生活環境:独居(長女隣家、夜間帰宅)
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医療負担割合:3割
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専門医介入:あり(呼吸器内科、循環器内科)
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公費負担医療:丸福
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障害者手帳・認定情報:なし