在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/09/30
生活環境の課題を抱えた独居高齢者、連携支援により在宅療養を継続できたケース
基本情報
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年齢・性別:83歳・女性
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居住地:名古屋市千種区
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家族構成:本人と内縁の夫の二人暮らし(夫は既に死亡)。長男はいるが関係不良。
保険・福祉情報
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医療保険:生活保護
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介護保険:要介護3(1割負担)
診断名
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変形性膝関節症
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廃用症候群
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COVID-19後
導入の背景
新型コロナウイルス陽性を契機に2022年3月、A病院へ転院。その後退院時には施設入所も検討されたが、同居人が本人の希望も汲み取り半ば強制的に在宅復帰。週1回のデイサービスを利用し入浴を継続したものの、体調や血圧上昇により十分に利用できず、病院への定期通院も困難となっていた。
生活環境は不衛生で自宅に大量のごみが溜め込まれ、さらに固定電話もなく連絡手段が不十分であったことから、2023年1月に当院の訪問診療を導入した。
介入内容と経過
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ケアマネジャー、訪問看護と当院が連携し、生活基盤の整備を優先して支援を開始。
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電話契約の導入やごみの処分について当初は本人の強い抵抗があったが、継続的に働きかけを行い徐々に改善。
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医療管理と並行して、生活環境の改善を重視したチーム支援を実施。
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現在も訪問診療を継続し、1年以上にわたり自宅療養を維持できている。
医療対応の詳細
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慢性疾患のフォローとバイタル管理
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廃用症候群に伴うADL低下の観察
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感染症既往の再燃リスクへの対応
支援のポイント
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生活環境(衛生面・通信手段)の改善が在宅継続に不可欠であった。
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本人の不安や拒否的態度を尊重しながら、ケアマネジャー・訪問看護・医師で情報を共有して根気強く支援。
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医療介入だけではなく「暮らせる環境づくり」を重視することで、在宅療養を可能にした。
考察
本症例は、医療的管理だけでなく生活環境の改善支援が在宅療養継続の鍵となった典型例である。高齢独居者の場合、生活基盤の脆弱さが医療の安定性を左右するため、医療・介護双方の連携による包括的アプローチが不可欠である。
付記情報
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疾患種別:整形外科疾患、感染症後遺症、生活習慣関連
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病名:変形性膝関節症、廃用症候群、COVID-19
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医療処置:なし
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エリア:名古屋市千種区
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生活環境:独居、生活環境不衛生(ごみ溜め込み、固定電話なし)
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医療負担割合:1割(生活保護)
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専門医介入:なし
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公費負担医療:生活保護
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障害者手帳・認定情報:なし