在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/09/30
聴覚障害とてんかんを抱える高齢女性、手話通訳を活用した在宅診療の開始
基本情報
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年齢・性別:70歳・女性
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居住エリア:名古屋市熱田区
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家族構成:夫と2人暮らし(キーパーソンは夫、夫も聴覚障害あり)
保険・福祉情報
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医療保険:1割負担
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介護保険:要介護1(1割負担)
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公費:福祉給付金資格者あり
診断名
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高血圧症
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便秘症
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症候性てんかん
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S状結腸過長症
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アルコール中毒
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横行結腸憩室炎
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結腸閉塞術後
導入の背景
聴覚障害によるコミュニケーション困難があり、筆談やジェスチャーで対応していた。2016年頃よりてんかん治療を開始し、当初は失神発作や転倒発作が見られたが、しばらく安定していた。しかし、2023年末より全身痙攣発作や意識消失を再発。さらにアルコール依存傾向も続いていた。
通院による継続管理が困難となり、訪問診療導入に至った。
介入内容と経過
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初診(2024/3/30)
焦点てんかん・高血圧・聾唖にて初診。手話通訳者が同席し、今後も訪問時に同席予定となった。
残薬多数のためカロナールのみ処方、採血を実施。
医師より服薬管理のため「週間カレンダー」の活用を提案。 -
以後、訪問診療を継続し、服薬確認や発作リスク管理を行っている。
医療対応の詳細
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残薬調整(カロナールのみ処方)
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採血チェック
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週間カレンダー導入による服薬支援
支援のポイント
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コミュニケーション支援:聴覚障害により診療上の情報共有に制約があるため、手話通訳者の同席を継続。
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服薬コンプライアンス:服薬不良が繰り返されていたため、カレンダー式管理を導入し、服薬習慣の定着を目指す。
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アルコール中毒への対応:飲酒は継続しているが減少傾向あり。今後も依存リスクへの支援やカウンセリングが課題。
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多疾患管理:高血圧・便秘症・てんかん再発リスクを含め、継続的な全身状態のモニタリングが必要。
考察
本症例は、聴覚障害とアルコール依存を背景に、てんかんや高血圧といった複数疾患を抱える独居に近い生活環境の患者である。訪問診療では、服薬支援と発作リスクの監視を行うと同時に、手話通訳の活用が診療の質を担保する上で重要である。今後も生活習慣の改善と服薬習慣化が安定的な在宅療養につながると考えられる。
付記情報
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疾患種別:神経疾患、循環器疾患、消化器疾患、依存症
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病名:症候性てんかん、高血圧、便秘症、S状結腸過長症、横行結腸憩室炎、結腸閉塞術後、アルコール中毒
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医療処置:なし
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エリア:名古屋市熱田区
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生活環境:夫と2人暮らし(夫も聴覚障害)
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医療負担割合:1割
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専門医介入:特記なし(通院歴あり)
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公費負担医療:福祉給付金資格者証
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障害者手帳・認定情報:聴覚障害あり