在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/09/30
進行胆のう癌患者、在宅緩和ケア導入からご逝去までの経過
基本情報
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年齢・性別:74歳・男性
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居住エリア:名古屋市千種区
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家族構成:本人、妻、長女、義息子、孫の5人暮らし
保険・福祉情報
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医療保険:後期高齢者医療保険(2割負担)
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介護保険:新規申請中
診断名
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胆のう癌(肝転移・腹膜播種を伴う)
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閉塞性黄疸
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胆管炎
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腹水貯留
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疼痛・倦怠感・食欲不振
導入の背景
胆のう癌の肝門部浸潤による閉塞性黄疸を契機に、胆管ステント留置や化学療法が行われていたが、効果は乏しく、食欲低下と全身状態の悪化により緩和療法主体へ移行した。外来通院は困難となり、家族から在宅療養希望があり訪問診療導入となった。
介入内容と経過
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疼痛管理:オピオイドを導入。ナルサス4mgから開始し、その後フェントステープへ増量。アブストラル舌下錠でレスキュー投与も実施。
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呼吸管理:呼吸不全に対して在宅酸素療法を導入。
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感染・発熱対応:腫瘍熱や誤嚥性肺炎を疑い、抗菌薬(CTRX)投与で苦痛緩和を図った。
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栄養管理:経口摂取は不良。補液やTPNの検討を行い、左鎖骨下CVポートを活用。
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倦怠感・食思不振:ステロイド(リンデロン)により症状が改善。
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腹水管理:腹部膨満はあるが、緊満感が強くなく穿刺は不要と判断。
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便秘・皮膚ケア:レシカルボン坐薬、保湿剤で対応。
症状は一時的に安定する場面もあったが、徐々に全身状態は悪化。導入から約2週間でご逝去された。
医療対応の詳細
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CVポート管理
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在宅酸素療法
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オピオイドによる疼痛緩和
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抗菌薬・ステロイド投与
支援のポイント
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初診時から訪問看護ステーションが介入し、日々の症状緩和と家族支援を併走。
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家族に対して緩和ケア病棟へのエントリーも提案しつつ、本人・家族の意向を尊重して在宅療養を優先。
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苦痛症状に対して迅速に薬剤調整を行い、最期まで自宅で療養を継続できた。
考察
進行胆のう癌に伴う多様な症状を短期間で集中的に対応する必要があった。特に疼痛・呼吸困難・倦怠感への薬剤調整と、訪問看護による連携支援が奏功し、本人の「自宅で過ごしたい」という希望を実現できた点に意義がある。
付記情報
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疾患種別:消化器癌・終末期がん
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病名:胆のう癌(肝転移・腹膜播種)、閉塞性黄疸、胆管炎
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医療処置:CVポート、在宅酸素
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エリア:名古屋市千種区
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生活環境:家族同居(5人暮らし)
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医療負担割合:2割
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専門医介入:消化器内科(M大学病院)
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公費負担医療:該当なし
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障害者手帳・認定情報:記載なし