在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/09/30
不在リスクを抱える認知症独居高齢者、連携強化で訪問診療導入に成功したケース
■ 基本情報
-
年齢・性別:85歳・男性
-
居住地:名古屋市名東区
-
家族構成:独居
■ 保険・福祉情報
-
医療保険:後期高齢者医療保険(1割負担)
-
公費制度:福祉給付金資格者証
-
介護保険:区分変更申請中
■ 診断名
-
認知症
-
高血圧症
■ 導入の背景
高血圧症に対しY病院に定期通院していたが、保険証や通帳を紛失するなど生活上の支障が顕著となり、本人自身も認知症の進行を自覚して支援を希望した。曜日感覚を失い、日常生活の遂行が困難となり、定期通院は実質不可能であった。こうした状況から訪問診療を希望され、2024年4月30日に当院での初診が予定された。
■ 介入内容と経過
初診時、本人が不在で診察に至らず、その後も訪問看護やヘルパー介入時に不在となることが多かった。時間の感覚を失い、食事の有無を忘れることから、1日に複数回買い物に出かけてしまい、金銭管理も困難となっていた。張り紙などの工夫も効果が乏しく、往診時の不在リスクが高かった。
このため、往診前にヘルパー等と調整して本人が在宅にいるよう支援体制を再設計。相談員を中心にケアマネジャー、身元保証人、訪問看護と連携し、再度初診を調整。結果として無事に訪問診療導入につながり、キーボックスも新設して継続的な介入が可能となった。
■ 医療対応の詳細
-
高血圧症の継続管理
-
認知症による生活上の混乱へのチーム対応
-
医療処置:なし
■ 支援のポイント
-
認知症患者に特有の「時間感覚の喪失」や「不在リスク」に対し、往診の仕組みを多職種で再設計した点が特徴的
-
医療行為よりも、生活支援と訪問調整の工夫が介入の核心となった
-
キーボックス設置やヘルパーの同席調整により、在宅医療の継続性を確保できた
■ 考察
本症例は、認知症の進行による生活混乱が大きな課題であったが、多職種の柔軟な連携によって在宅医療導入が実現した事例である。医療処置そのものよりも、生活管理と訪問調整が在宅医療の基盤であることを示している。認知症独居高齢者に対しては、医療・介護サービスの接点をどう確実に作るかが継続的支援の鍵となる。
■ 付記情報
-
疾患種別:認知症・循環器疾患
-
病名:認知症、高血圧症
-
医療処置:なし
-
エリア:名古屋市名東区
-
生活環境:独居
-
医療負担割合:1割
-
専門医介入:なし(定期通院はY病院)
-
公費負担医療:福祉給付金資格者証
-
障害者手帳・認定情報:なし