在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/09/30
独居で支援が乏しい脳梗塞後患者、不適正救急要請を繰り返すなかで在宅支援体制を構築したケース
■ 基本情報
-
年齢・性別:72歳・男性
-
居住地:名古屋市中区
-
家族構成:独居(身寄りなし)
■ 保険・福祉情報
-
医療保険:国民健康保険(3割)→生活保護に移行
-
介護保険:要介護2(1割負担)
■ 診断名
-
脳梗塞後
-
左片麻痺
■ 導入の背景
2022年9月、朝に右麻痺が出現しA病院に救急搬送。左視床出血と診断されたが、保存的治療で対応された。その後B病院に転院しリハビリを継続、左不全麻痺が残存するも歩行器での歩行が可能となった。
自宅退院に伴い訪問診療を勧められたが、本人は近隣の病院への通院を希望し訪問診療をキャンセル。しかし実際には歩行困難で在宅生活に不安を抱き、救急要請するも不搬送となった。本人も「このままでは不適正な救急要請を繰り返してしまう」と危惧し、2023年2月、当院が急遽初診を行った。
■ 介入内容と経過
-
初診時、自宅はゴミが片付けられず生活環境が著しく不良な状態であった
-
本人は金銭的理由もあり片付けを拒んでいたが、支援を調整し生活環境の整備を進めた
-
不適正な救急要請を繰り返す恐れがあり、訪問看護やケアマネと連携し、医師・ケアマネ・本人による話し合いの場を設定
-
定期的な訪問診療と多職種連携により、在宅療養を継続可能な体制を整備した
■ 医療対応の詳細
-
特別な侵襲的医療処置はなし
-
症状変化時の救急要請を減らすため、訪問看護・医師による説明とフォローを徹底
■ 支援のポイント
-
独居で身寄りがないため、生活環境の改善が在宅療養の前提条件となった
-
不適正な救急要請を繰り返さないために、訪問診療・看護・ケアマネの三者連携が不可欠であった
-
本人の生活不安を受け止めつつ、適正な医療アクセスを整備することが重要であった
■ 考察
本症例は、身体的な後遺症だけでなく、独居・生活困難・不安感の強さが在宅療養の継続に大きく影響したケースである。医療処置以上に「生活環境整備」と「安心感の確保」が課題であり、訪問診療の介入によって救急依存から在宅支援への移行を実現できた点が特徴的である。今後も生活状況の変化に応じた柔軟な対応が求められる。
■ 付記情報
-
疾患種別:脳血管疾患
-
病名:脳梗塞後、左片麻痺
-
医療処置:なし
-
エリア:名古屋市中区
-
生活環境:独居(生活環境は不良、片付け支援あり)
-
医療負担割合:生活保護(自己負担なし)
-
専門医介入:A病院・B病院(入院・リハビリ期)
-
公費負担医療:生活保護医療扶助
-
障害者手帳・認定情報:なし