在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/09/30
脊髄小脳変性症の患者、在宅療養と家族支援を継続するケース
■ 基本情報
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年齢・性別:66歳・女性
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居住地:名古屋市中区
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家族構成:本人と姉の二人暮らし
■ 保険・福祉情報
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医療保険:国民健康保険(3割負担)
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介護保険:要介護4(1割負担)
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公費制度:身体障害者手帳、福祉給付金資格者証
■ 診断名
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脊髄小脳変性症
■ 導入の背景
2016年頃より転倒を繰り返し、同年5月には書字困難や体動時の浮遊感が出現。
2018年7月、A病院を受診し構音障害、眼振、小脳失調を認め、脊髄小脳変性症の診断を受けた。さらにB大学病院神経内科で精査され、確定診断となった。退院後はC病院で外来フォローを受けていた。
当初は杖歩行であったが徐々にADLが低下。通院負担が大きくなったことから併診の形で当院が訪問診療を開始した。
■ 介入内容と経過
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訪問診療導入後は、本人の意思疎通が困難なため、姉がキーパーソンとして生活支援や意向の代弁を担った
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姉は自身もがんステージⅣであり、自身の療養と終活を行いながらサポートを続けている
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状況に応じてレスパイト入院を活用し、相談員が姉と連携し施設入所の可能性も視野に入れた調整を実施
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現在も在宅療養を継続中だが、最終的には施設入所が必要となる見込みであり、タイミングを逃さないために本人・家族と意識共有を図っている
■ 医療対応の詳細
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診療は症状の変化に応じたフォローを中心とし、特定の侵襲的医療行為は行っていない
■ 支援のポイント
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診療そのものだけでなく、患者の生活支援を担う家族の体調や環境に強く依存している点に留意
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本人・家族双方の負担を軽減するため、レスパイト入院や施設入所など複数の選択肢を並行して検討する必要がある
■ 考察
本症例は、進行性の神経疾患に対して在宅療養を継続しているが、家族の健康状態や生活背景が療養の継続可否に直結するケースである。
患者支援だけでなく、キーパーソンである家族支援を同時に行うことが、在宅医療の質を維持する上で不可欠である。早期から施設入所を視野に入れて調整を進めておくことが、長期的な療養の安定につながる。
■ 付記情報
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疾患種別:神経疾患
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病名:脊髄小脳変性症
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医療処置:なし
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エリア:名古屋市中区
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生活環境:姉と二人暮らし(姉もがんステージⅣ)
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医療負担割合:3割
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専門医介入:B大学病院神経内科(診断時・経過フォロー)
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公費負担医療:福祉給付金資格者証
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障害者手帳・認定情報:身体障害者手帳