在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/09/30
全盲と夫婦二人暮らしの制約を抱える高齢男性への在宅支援
■ 基本情報
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年齢・性別:92歳・男性
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居住地:名古屋市名東区
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家族構成:認知症の妻と二人暮らし。長女(中村区在住)がキーパーソン、長男も同区内に居住
■ 保険・福祉情報
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医療保険:後期高齢者医療保険(1割負担)
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介護保険:要介護2(1割負担)
■ 診断名
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緑内障(全盲)
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腰部脊柱管狭窄症/変形性脊椎症
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前立腺肥大症・過活動膀胱
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不眠症
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便秘症
■ 導入の背景
全盲の状態で、認知症のある妻と二人暮らし。生活支援は長女が担っていたが、車を持たず公共交通機関での対応であり負担が大きかった。
また腰痛・膝痛が強く、転倒エピソードも頻回で、服薬管理も困難になっていた。こうした背景から訪問診療を希望し、初診が開始された。
■ 介入内容と経過
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訪問医を男性医師に調整するなど、夫婦関係の心理的側面に配慮して訪問診療を導入
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介入後は訪問診療を中心に、他の介護サービスも連携しながら調整が進んだ
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日常生活の支援として、着替えや服薬管理を家族・サービスと協力して実施
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最近はベッド上で過ごす時間が増え、褥瘡が出現したため処置を継続している
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本人は「頭はクリアだが、下半身が不自由」と述べつつも、穏やかに生活を継続できている
■ 医療対応の詳細
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定期的な全身状態の確認
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褥瘡処置の実施
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服薬管理への関与
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家族・介護サービスとの連携強化
■ 支援のポイント
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全盲・認知症配偶者との二人暮らしという複合的な制約に対し、医療と介護の連携が不可欠
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医師やケアスタッフの関わり方を家族背景や心理的要因に合わせて調整することが支援の受容性を高めた
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キーパーソンが遠方から公共交通機関で支える状況でも、在宅療養が継続できる仕組みづくりが重要
■ 考察
本症例は、身体的制約(視覚障害・運動障害)と社会的制約(認知症の配偶者・支援者の交通手段の制限)が重なるケースである。
訪問診療の導入により「医療と介護のつなぎ役」として機能し、生活全体を見据えた支援が可能となった。褥瘡対応を含めた医療介入は、本人のQOLを維持するうえで重要であった。
■ 付記情報
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疾患種別:眼科疾患、整形外科疾患、泌尿器疾患、神経疾患
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病名:緑内障(全盲)、腰部脊柱管狭窄症/変形性脊椎症、前立腺肥大症・過活動膀胱、不眠症、便秘症
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医療処置:褥瘡処置
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エリア:名古屋市名東区
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生活環境:妻(認知症)との二人暮らし、長女(中村区)、長男(同区内)
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医療負担割合:1割
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専門医介入:該当なし
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公費負担医療:福祉給付金資格者証
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障害者手帳・認定情報:該当なし