在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/09/30
透析通院と並行しながら訪問診療で複数処置を支えたケース
■ 基本情報
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年齢・性別:87歳・女性
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居住地:名古屋市守山区
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家族構成:長女と二人暮らし。夫は他界。子供は4人だが、主に関わるのは長女(キーパーソン)と長男
■ 保険・福祉情報
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医療保険:後期高齢者医療保険(1割負担)
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介護保険:要介護5(1割負担)
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公費:福祉給付金資格者証
■ 診断名
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慢性腎不全
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ANCA関連血管炎
■ 導入の背景
ANCA関連血管炎による腎不全でA病院にて維持透析(週3回)を継続していた。
2022年頃より右第一足趾に骨髄炎を認め、抗菌薬治療とガーゼによる局所保護が行われていた。また、背部や仙骨部には褥瘡が形成されており、洗浄やゲーベン塗布で対応していた。
透析は従来通り外来通院で継続するが、その他の体調管理や処置については在宅での対応を希望され、2023年3月末より当院の訪問診療を導入することとなった。
■ 介入内容と経過
訪問診療では、褥瘡の評価と処置を中心に全身状態を観察し、訪問看護と連携しながら経過をフォローした。
内服や透析以外のサポートを在宅で担うことで、家族(特にキーパーソンである長女)の負担軽減を図った。
介入から約半年後、自宅での療養を継続しつつ看取りの時期を迎え、穏やかに永眠された。
■ 医療対応の詳細
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褥瘡処置(洗浄、ゲーベン塗布、ガーゼ保護)
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骨髄炎に対する保存的管理
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透析通院との並行フォロー
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家族への生活支援アドバイス
■ 支援のポイント
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透析通院を続けながら在宅療養を行うケースでは、「外来医療」と「訪問診療・訪問看護」の役割分担を明確にすることが重要である
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褥瘡や骨髄炎といった慢性的な処置を在宅で継続することで、患者・家族が望む生活の場を維持できた
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キーパーソンとなる家族への情報提供とサポートが、安心した療養継続に直結する
■ 考察
本症例は、透析通院を継続しながら訪問診療を導入したことで、複数の処置を在宅で継続できたケースである。患者の疾患や処置が多岐にわたる場合でも、訪問診療の介入により、家族の介護負担を軽減しつつ在宅での療養を可能にすることができることを示している。
■ 付記情報
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疾患種別:腎疾患、自己免疫疾患
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病名:慢性腎不全、ANCA関連血管炎、右第一足趾骨髄炎、褥瘡
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医療処置:褥瘡処置、透析
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エリア:名古屋市守山区
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生活環境:長女と二人暮らし。長男も支援に関与
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医療負担割合:1割
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専門医介入:A病院(透析管理)
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公費負担医療:福祉給付金資格者証
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障害者手帳・認定情報:記載なし