在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/09/30
複数の骨折歴と前立腺がんを抱え、在宅療養から施設入所へ移行したケース
■ 基本情報
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年齢・性別:89歳・男性
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居住地:名古屋市緑区
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家族構成:妻との二人暮らし
■ 保険・福祉情報
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医療保険:後期高齢者医療(1割負担)
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公費:丸福
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介護保険:要介護4(1割負担)
■ 診断名
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腰椎圧迫骨折(複数回)
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前立腺がん
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高血圧症
■ 導入の背景
2006年より高血圧症・脂質異常症に対してA病院内科で内服治療を開始。2012年には前立腺がんと診断され、A病院泌尿器科で内分泌療法を継続してきた。
2017年以降、胸腰椎圧迫骨折を繰り返し入院を重ね、2022年には腰椎破裂骨折によりB大学で入院治療を受け、その後C病院でリハビリを実施。
自宅退院後はD診療所に通院しながら訪問看護・訪問リハを利用していたが、腰痛改善に乏しくADLが低下。通院が困難になり、本人・家族の希望で当院の訪問診療を導入した。
■ 介入内容と経過
2023年3月より当院で訪問診療を開始。定期的な全身状態の観察、疼痛管理、介護者である妻の負担軽減に向けた多職種連携を行った。
妻も高齢で介護負担が大きくなりすぎないよう支援体制を整備したが、2024年1月に肺炎を発症し緊急搬送。その後は自宅退院が困難と判断され、2024年3月に訪問診療を終了し、施設入所へ移行となった。
■ 医療対応の詳細
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イベニティ(月1回)投与
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慢性疾患の内服調整
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腰椎骨折後の疼痛管理とADL評価
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訪問看護・訪問リハとの連携
■ 支援のポイント
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複数回の骨折歴とがん治療を背景に、在宅療養の継続には介護力の限界が大きな課題となった
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高齢の配偶者が介護の中心を担う場合、介護負担軽減のために早期から在宅支援と施設入所の両面を視野に入れる必要がある
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訪問診療は、在宅療養から施設入所への移行を円滑に支える役割を果たした
■ 考察
本症例は、複数の骨折歴と進行性疾患を抱えながら在宅療養を継続したが、介護力の限界により施設入所へ移行した事例である。在宅医療は患者と家族の希望を支える一方で、介護者の年齢や体力的制約を考慮し、早期から次の療養先を視野に入れた支援を行うことが重要であることを示している。
■ 付記情報
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疾患種別:整形外科疾患、泌尿器科疾患、循環器疾患
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病名:腰椎圧迫骨折、前立腺がん、高血圧症
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医療処置:イベニティ(月1回)
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エリア:名古屋市緑区
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生活環境:妻と二人暮らし
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医療負担割合:1割
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専門医介入:A病院(内科・泌尿器科)、B大学、C病院、D診療所
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公費負担医療:丸福
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障害者手帳・認定情報:記載なし