在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/09/30
認知症を伴う独居高齢者、通院困難により訪問診療を導入したケース
■ 基本情報
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年齢・性別:83歳・女性
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居住地:名古屋市北区
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家族構成:本人独居。長女(隣県在住)がキーパーソン。県内に長男も在住。夫は市内病院に入院中。
■ 保険・福祉情報
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医療保険:生活保護受給
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介護保険:要介護3(1割負担)
■ 診断名
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高血圧症
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アルツハイマー型認知症
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上行結腸がん術後
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不安神経症
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不眠症
■ 導入の背景
2022年7月、K第一病院にて上行結腸がんに対し腹腔鏡下右結腸切除術を施行(pT3N0M0, StageIIA)。術後は3か月ごとに定期受診を続けていたが、認知機能低下が顕著となり、被害妄想や作話、物忘れが目立つようになった。服薬管理も不十分で、不必要な受診を繰り返すなどの問題が見られた。独居であり通院自体が困難になってきたため、訪問診療の導入が決定された。
■ 介入内容と経過
訪問診療開始後は、服薬状況や日常生活の安定性を定期的に確認し、必要に応じて調整を行った。認知症による被害妄想や不安に対しては、家族との連携を密にしながら対応を進めた。介入開始から2年が経過しているが、大きな問題なく在宅生活を継続できている。
■ 医療対応の詳細
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定期的な全身状態の確認
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服薬状況の把握と指導
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認知症に伴う精神的変動への対応
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必要時の家族との情報共有
■ 支援のポイント
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独居であるが、近隣に家族(長男)、隣県にキーパーソン(長女)がいるため、遠隔的支援と訪問診療を組み合わせることで在宅継続が可能となった
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認知症患者の場合、服薬や通院の困難さが医療継続の壁となるため、訪問診療の導入が生活の安定に直結する
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医療だけでなく精神的支えが重要であり、生活保護を背景にした支援調整も欠かせない
■ 考察
本症例は、認知症を抱える独居高齢者において、通院困難が顕在化した際に訪問診療が有効に機能した事例である。独居というリスク要因がありながらも、訪問診療と家族の支援により、2年以上在宅生活を継続できている点は重要である。今後も認知機能の進行や生活状況の変化に応じて、柔軟な医療・介護連携が求められる。
■ 付記情報
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疾患種別:脳血管・消化器・精神疾患
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病名:高血圧症、アルツハイマー型認知症、上行結腸がん術後、不安神経症、不眠症
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医療処置:特になし
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エリア:名古屋市北区
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生活環境:独居(長女がキーパーソン、長男は県内在住、夫は入院中)
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医療負担割合:生活保護(医療扶助)
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専門医介入:K第一病院(外科フォロー)
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公費負担医療:生活保護
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障害者手帳・認定情報:記載なし