在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/09/30
独居高齢者、施設入所希望を抱えながら約3年間在宅療養を継続できたケース
■ 基本情報
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年齢・性別:88歳・女性
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居住地:名古屋市中川区
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家族構成:独居。キーパーソンは同区内在住の三男。長男・次男はすでに逝去。
■ 保険・福祉情報
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後期高齢者医療保険(1割負担)
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要介護2(1割負担)
■ 診断名
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2型糖尿病
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右大腿骨転子部骨折術後
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脂質異常症
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高尿酸血症
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アレルギー性鼻炎
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便秘症
■ 導入の背景
以前はE病院で通院加療を行い、インスリン治療を受けていた。その後Uクリニックに転院しインスリン管理を継続していたが、転倒による大腿骨骨折でO病院に入院し骨接合術を施行。この入院中にインスリンは終了となった。
リハビリ目的でSリハビリテーション病院へ転院し、自宅退院が可能なレベルに改善。その後は通院が困難となり、当院の訪問診療を導入した。
介入当初から本人は施設入所を希望しており、訪問診療は入所までの「つなぎ」の雰囲気があった。ただし実際には在宅生活が継続でき、施設入所は具体化しないまま経過していた。
■ 介入内容と経過
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訪問診療で全身状態・服薬管理を継続
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頻尿(朝に10回程度の排尿)や吐き気などの症状増悪時には往診対応を実施
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食欲不振や服薬困難時に入院を検討する体制を構築
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偽痛風が判明し、O病院に入院。その後、当院に転院して療養を継続
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入院中に身元保証人が整い、その後は施設入所の流れに移行
■ 医療対応の詳細
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定期的な全身状態の評価
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頻尿・消化器症状の出現時には往診で迅速に対応
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偽痛風診断後は加療を行い、再度の在宅生活に向けて調整
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入所先施設との連携を図り、スムーズに療養環境を移行
■ 支援のポイント
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独居であるため、急変時の対応体制をあらかじめ整備していたことが重要
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本人は施設入所を希望していたが、3年間は在宅生活が維持できたことが家族・医療介入の効果を示している
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キーパーソンの関わりが弱い状況下でも、地域包括・医療機関・施設の連携により療養の継続が可能となった
■ 考察
この事例は、本人の希望と実際の療養生活が乖離しつつも、医療介入と地域連携により在宅療養が長期間継続できたケースである。施設入所が「最終的な選択肢」とされながらも、医療・介護のサポートにより自宅での生活が約3年間可能であった点は、独居高齢者支援における一つの成功例といえる。
■ 付記情報
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疾患種別:代謝性疾患、整形外科疾患、生活習慣病
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病名:2型糖尿病、右大腿骨転子部骨折術後、脂質異常症、高尿酸血症、アレルギー性鼻炎、便秘症
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医療処置:特になし
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エリア:名古屋市中川区
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生活環境:独居(家族支援は限定的)
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医療負担割合:1割
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専門医介入:O病院、Sリハビリテーション病院などで加療・リハビリ
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公費負担医療:該当なし
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障害者手帳・認定情報:記載なし