在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/09/30
独居高齢者、再発直腸癌を抱えながら在宅療養を希望したケース
■ 基本情報
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年齢・性別:90歳・男性
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居住地:名古屋市東区
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家族構成:独居。長男夫婦と孫は市内在住。次男は県内在住。キーパーソンは長男の妻または孫。
■ 保険・福祉情報
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後期高齢者医療保険(1割負担)
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要支援2(2割負担)
■ 診断名
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直腸癌術後再発末期状態(膀胱再発)
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ストマ造設状態
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慢性腎不全
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高血圧症
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腰痛症
■ 導入の背景
N医療センターで直腸癌の再発を指摘されていたが、本人の病状理解は不十分な状況であった。採血で鉄過剰・高Mg血症を認め内服中止の調整が行われていたが、受診困難のため当院へ紹介となった。
本人は疾患についてある程度理解しており、学徒動員やバブル期の金融経験を背景に、自身の死生観をもっている印象を受けた。本人の希望は「自宅で療養を続けたい」というものであった。
■ 介入内容と経過
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訪問診療を導入し、体調・食欲を確認しながらサポート
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本人は食欲低下の訴えがありつつも「そうめんを食べている」「餃子を買ってきて食べた」と話すなど、自宅での生活を続けていた
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定期訪問により生活支援と全身状態の把握を継続
■ 医療対応の詳細
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点滴による全身状態のサポート
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疼痛や栄養状態の変化に応じた調整
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急変時にはN医療センターへの救急搬送体制を確保
■ 支援のポイント
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独居でありながら、長男夫婦や孫が市内に住んでいることが在宅継続を支える要因となった
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本人が疾患を受け入れ、死生観を持っていたことが療養環境の選択をスムーズにした
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家族・医療機関の連携により、最期まで希望を尊重する体制を整えることができた
■ 考察
本症例は、高齢独居で末期がんを抱えた患者に対し、家族の近距離支援と訪問診療が組み合わさることで在宅療養が可能となった例である。最期は救急搬送から入院・逝去となったが、本人が「自宅で療養したい」という希望を持ち続け、その意志に沿った時間を在宅で過ごせた点は意義深い。在宅医療は、患者の死生観や人生背景に寄り添うことが重要であることを示している。
■ 付記情報
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疾患種別:悪性腫瘍、慢性腎疾患、生活習慣病
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病名:直腸癌術後再発、慢性腎不全、高血圧症、腰痛症
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医療処置:点滴、ストマ管理
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エリア:名古屋市東区
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生活環境:独居(家族支援あり)
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医療負担割合:1割
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専門医介入:N医療センター(外来・救急対応)
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公費負担医療:該当なし
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障害者手帳・認定情報:記載なし