在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/09/30
慢性疼痛とうつ病が相互に影響し、在宅医療が安定化につながったケース
■ 基本情報
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年齢・性別:65歳・男性
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居住地:名古屋市緑区
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家族構成:独居(身寄りなし)
■ 保険・福祉情報
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生活保護
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自立支援医療
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要支援2(1割負担)
■ 診断名
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うつ病
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線維筋痛症(左下肢)
■ 導入の背景
長期にわたり抑うつ症状が持続し、食欲低下や希死念慮も認められたため任意入院を経験。退院後は外来通院を継続していた。
線維筋痛症により慢性的な疼痛を抱えており、抑うつが悪化すると疼痛が増強し、さらに疼痛が強まると抑うつが悪化するという悪循環に陥っていた。
そのため意欲の低下や痛みによって通院が困難となり、抗うつ薬の内服継続が不十分となる時期もあった。過去には玄関先まで出られず、訪問看護の利用が2か月中断することもあり、安定した支援体制が必要となった。
■ 介入内容と経過
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当院訪問診療を導入し、定期的な診察と服薬状況の確認を継続
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精神状態や疼痛の程度に応じて内服調整を行い、訪問看護と連携して服薬アドヒアランスをサポート
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介入から半年後に両下肢のしびれを訴え入院となったが、その後当院へ転院し、在宅復帰の準備を経て再度自宅療養へ移行
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現在は在宅療養開始から約1年半が経過し、体調は比較的安定。療養生活を継続できている
■ 医療対応の詳細
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抗うつ薬の継続内服管理
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疼痛に対する薬物療法と経過観察
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訪問看護による服薬・体調確認
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必要に応じた入院・転院支援
■ 支援のポイント
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慢性疼痛とうつ病が相互に悪循環を形成するため、疼痛と抑うつの両面からアプローチすることが重要
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通院困難な状況では訪問診療の介入により、服薬継続性や生活の安定度が大きく改善する
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独居で身寄りがないケースにおいては、医療と福祉が連携し、切れ目のない支援体制を維持することが鍵となる
■ 考察
本症例は、慢性疼痛と精神疾患が複雑に絡み合う中で、通院困難が生じやすい患者に対する在宅医療の有効性を示している。訪問診療と訪問看護が継続的に介入することで、服薬・体調のモニタリングが可能となり、結果として生活の安定につながった。今後も入院や症状増悪のリスクに備えつつ、持続的な支援体制が求められる。
■ 付記情報
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疾患種別:精神疾患・慢性疼痛疾患
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病名:うつ病、線維筋痛症(左下肢)
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医療処置:該当なし
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エリア:名古屋市緑区
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生活環境:独居(身寄りなし)
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医療負担割合:1割
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専門医介入:精神科フォローあり
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公費負担医療:生活保護、自立支援医療
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障害者手帳・認定情報:記載なし