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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/09/30

高齢女性の精神科的問題と高血圧管理不全、家族負担への福祉的支援が求められたケース

■ 基本情報

  • 82歳・女性

  • 名古屋市千種区在住

  • 娘と二人暮らし(遠方に息子1人)

■ 保険・福祉情報

  • 後期高齢者医療保険(1割負担)

  • 介護保険:未申請

■ 診断名

  • 高血圧症

  • 認知症や統合失調症、パーソナリティ障害など精神科的問題の可能性

■ 導入の背景

近隣や家族から「同じ話を繰り返す」「夜間に大声を出す」といった行動が報告され、生活面での問題が顕在化した。
本人は受診を拒否しており、通院での介入が困難であったため、精神科的フォローも含め当院で訪問診療を導入した。

■ 介入内容と経過

  • 本人の状態

    • 診察時の接触を拒否、バイタル測定も困難

    • 「生活を変えて治す」と述べ、治療拒否の姿勢

    • 日常生活は自立しており、金銭管理・家事は可能。ただし入浴は不規則かつ長時間の傾向

    • 物品への強いこだわりあり(ティッシュ・トイレットペーパーなど)

  • 健康面

    • 血圧は200mmHgを超える記録あり、降圧治療が必要だが本人は治療を拒否

  • 娘の状況

    • 夜間の独り言や叫びで睡眠が妨げられ、心身ともに疲弊

    • 過去に家族内暴力(母を包丁で刺すエピソード)があり、心理的負担が非常に大きい

  • 長男の意見

    • 姉(娘)の負担を懸念し、母娘の別居を希望

    • 経済的な課題があり、実現は困難

■ 医療対応の詳細

  • 月1回の訪問診療で状態観察を継続

  • 精神科的評価・介入を視野に入れた支援方針

  • 地域包括ケア・福祉サービスとの連携を検討

■ 支援のポイント

  • 精神科的フォローの必要性が高い症例

  • 医療よりも福祉支援の比重が大きく、地域包括との連携が必須

  • 家族(特に同居娘)の心理的・身体的負担を軽減する支援が急務

  • 別居を含めた生活環境調整が理想だが、経済的制約を考慮する必要がある

■ 考察

本事例は、医療的介入だけでは十分に支えきれない「精神科的問題+家族関係の困難」を背景とするケースであった。
訪問診療の導入が、医療だけでなく福祉・精神科領域を含めた支援体制構築の起点となった。
今後は地域包括ケアと連携し、在宅療養と家族支援を両立させる視点が不可欠である。

■ 付記情報

  • 疾患種別:循環器疾患(高血圧)・精神科的問題疑い

  • 病名:高血圧症、認知症/統合失調症/パーソナリティ障害の可能性

  • 医療処置:なし

  • エリア:名古屋市千種区

  • 生活環境:娘との二人暮らし、遠方に息子1人

  • 医療負担割合:1割

  • 専門医介入:精神科介入検討中

  • 公費負担医療:なし

  • 障害者手帳・認定情報:なし