在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/09/30
歩行障害と認知機能低下が進行、神経疾患が疑われ総合病院精査へつながったケース
■ 基本情報
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73歳・女性
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名古屋市千種区在住
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夫と二人暮らし
■ 保険・福祉情報
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後期高齢者医療保険(1割負担)
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介護保険:未申請
■ 診断名(疑いを含む)
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パーキンソン症候群(パーキンソニズム)疑い
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小脳失調症疑い
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神経難病の可能性
■ 導入の背景
夫からの依頼で訪問診療を開始。本人は長期にわたり医療受診歴がなく、介護保険も未申請であった。
近年ADL低下が顕著となり、通院困難となったため当院介入となった。
主治医意見書の作成やケアマネジャーとの調整も当院が担当することとなった。
■ 介入内容と経過
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既往歴:特になし(耳の聞こえにくさの自覚あり)
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アレルギー歴:なし
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予防接種歴:新型コロナワクチン接種後に一度意識消失歴あり。インフルエンザワクチンは未接種。
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内服歴:なし
症状の推移
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2023年頃より足の不自由さが進行、外出困難となり転倒歴もあり。現在は伝い歩きのみ可能。
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2024年春頃から動作開始に時間を要するようになり、症状が顕著化。
身体所見
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バイタル:BT 37.0℃ / HR 64 / BP 182/100 / SpO₂ 97%
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意識:清明、受け答え良好
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胸部:心雑音あり、呼吸音清
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腹部:平坦・軟
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下肢:浮腫なし、乾燥あり、白癬菌陽性
神経所見
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歩行:すり足歩行、動作開始困難、下肢挙上困難
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表情:乏しい
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上肢:軽度の固縮あり、安静時振戦は不明瞭
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認知:短期記憶の低下を認め、認知機能障害の可能性あり
■ 医療対応の詳細
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精査の必要性を判断し、M病院神経内科への受診を調整
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地域連携室へ連絡済み、夫へ紹介状を手渡し済み
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ケアマネジャーへ支援調整を依頼
■ 支援のポイント
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医療歴や介護保険申請が途絶していた高齢者において、在宅医療導入が早期の評価・精査につながることを確認できた
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歩行障害・認知機能低下といった症状を見逃さず、早期に神経疾患を疑い精査へつなげる重要性
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家族(夫)の依頼を起点に、多職種連携(地域連携室・ケアマネジャー)へつなげることで支援体制の構築が可能となった
■ 考察
医療受診歴が長期に途絶していた高齢者においても、在宅医療の導入を契機に未診断疾患の拾い上げが可能となる。
神経疾患や認知症の初期症状が生活困難につながる前に、訪問診療から精査につなげる役割が示された。
■ 付記情報
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疾患種別:神経疾患疑い
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病名:パーキンソン症候群疑い、小脳失調症疑い、認知機能障害疑い
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医療処置:なし
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エリア:名古屋市千種区
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生活環境:夫との二人暮らし
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医療負担割合:1割
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専門医介入:M病院神経内科へ調整中
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公費負担医療:なし
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障害者手帳・認定情報:なし