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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/09/30

COPD・肝疾患を併せ持つ高齢患者、治療への強い希望を尊重しながら在宅療養を継続したケース

■ 基本情報

  • 86歳・男性

  • 名古屋市南区在住

  • 妻・小学生の娘と3人暮らし

■ 保険・福祉情報

  • 後期高齢者医療保険(1割負担)

  • 福祉給付金資格者証

  • 介護保険:要介護4

■ 診断名

  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)

  • B型肝炎

  • 肝硬変

■ 導入の背景

COPD、大腸腺腫、原発性胆汁性胆管炎疑いに対し大学病院で加療を受けた後、リハビリ目的でK病院へ転院。退院後も臥床生活が続き、右下肢痛が悪化。
別の訪問診療を受けていたが、主治医との関係が良くなく、家族の希望で当院への切り替えとなった。

■ 介入内容と経過

  • 蜂窩織炎疑い:抗菌薬に反応が乏しく、内服治療で経過観察。

  • 生活状況:るいそう著明、ADL低下、自立歩行困難。排尿はし瓶で対応。食事は妻の調理に加えエンシュア1缶を摂取。

  • 治療に対するこだわり:医療そのものへの不信はなく、原因を調べて説明する姿勢を重視。適切に説明できれば治療を受け入れる傾向があった。

■ 医療対応の詳細

  • 定期的な診察・バイタル評価

  • 内服管理とコンプライアンス確認

  • 右下肢疼痛・炎症に対する抗菌薬治療

  • 経過に応じた生活支援・在宅療養指導

■ 支援のポイント

  • 患者本人の強い希望を尊重しつつ、医学的な説明を繰り返し行うことが受け入れの前提となった

  • 長女がヤングケアラーとして介入している可能性、さらに家庭内にDVに近い問題が潜んでいる点に留意が必要

  • サービス利用は本人のこだわりで減少傾向にあり、介護支援計画の再調整が求められた

  • 急変時の入院は希望せず、看取りを前提とした在宅療養方針で支援

■ 考察

この症例は「治療方針へのこだわりを持つ患者への対応」「ヤングケアラーを含む家族背景」「サービス受け入れの揺らぎ」という複合的な要素が特徴的であった。
訪問診療の役割は、医学的な説明責任を果たすと同時に、家族関係や生活背景をふまえた支援体制を柔軟に整えることにあった。

■ 付記情報

  • 疾患種別:呼吸器疾患、肝疾患

  • 病名:COPD、B型肝炎、肝硬変

  • 医療処置:なし

  • エリア:名古屋市南区

  • 生活環境:妻と小学生の娘との同居(ヤングケアラー関与の可能性あり)

  • 医療負担割合:1割

  • 専門医介入:呼吸器内科(大学病院)

  • 公費負担医療:福祉給付金資格者証

  • 障害者手帳・認定情報:なし