在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/09/30
複数医療処置を抱える末期がん患者、自宅療養を継続できたケース
■ 基本情報
66歳・男性
名古屋市中区在住
独居。弟(尾張旭市在住)が支援
■ 保険・福祉情報
国民健康保険(3割負担)
介護保険申請中
■ 診断名
-
肛門管癌末期
-
癌性疼痛
-
左腎瘻造設状態
-
小腸ストマ造設状態(腸閉塞による)
■ 導入の背景
肛門管癌に対しA病院で手術(腹腔鏡下直腸切断術・側方リンパ節郭清)を施行。術後化学療法は本人の希望で未実施。
その後、左鼠径リンパ節再発で郭清術を実施。さらに多発リンパ節再発と肺転移が判明し、化学療法を継続。
左尿管狭窄による腎瘻造設、腸閉塞による小腸ストマ造設も行われた。
2023年にはせん妄出現のため在宅復帰は困難と判断されB病院へ転院となったが、転院後に全身状態が安定したため、自宅退院を希望され、弟の支援のもと訪問診療を導入した。
■ 介入内容と経過
訪問診療開始後は、疼痛をナルサス12mgを中心にコントロール。A病院への定期受診も継続し、通院時は弟が介助を担当。
在宅療養中は食欲低下がみられたものの補液は不要で、比較的安定した経過を維持。
導入から約3か月後、自宅にて静かに最期を迎えられた。
■ 医療対応の詳細
-
疼痛管理:リン酸コデイン、ナルサス、カロナール
-
腎瘻管理:4週ごとにA病院で交換
-
小腸ストマ管理:在宅にて継続
-
胃ろう管理
■ 支援のポイント
-
本人の「自宅で過ごしたい」という希望を尊重し、訪問診療と病院通院を両立
-
弟が日常的な支援を担い、単身生活の弱点を補った
-
多様な医療処置を抱える中でも疼痛緩和と機器管理を並行し、在宅看取りを実現
■ 考察
進行がん患者において、複数の医療処置(腎瘻・ストマ・疼痛管理)を抱えていても、訪問診療と家族支援の体制を構築することで在宅療養は成立する。
本人・家族の希望を軸にした支援体制が、安心した看取りにつながることを示した事例である。
■ 付記情報
-
疾患種別:悪性腫瘍
-
病名:肛門管癌末期、癌性疼痛、腎瘻造設状態、小腸ストマ造設状態
-
医療処置:胃ろう管理、腎瘻管理、小腸ストマ管理
-
エリア:名古屋市中区
-
生活環境:独居(弟の支援あり)
-
医療負担割合:3割
-
専門医介入:消化器外科(A病院)
-
公費負担医療:なし
-
障害者手帳・認定情報:なし