在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/09/30
「進行性卵巣がん患者に対する在宅緩和ケアと看取り支援」
基本情報
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年齢・性別:81歳・女性
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居住地:名古屋市守山区
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家族構成:本人、長男、長男の妻、孫との4人暮らし。長女も区内在住
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保険・福祉情報:後期高齢者医療保険(1割負担)、要介護2(1割負担)
主病・健康状態
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進行性卵巣がん
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癌性腹膜炎を伴い、腹水増加と腹痛が持続していた
導入の背景
腹痛を主訴に病院を受診したところ、CT・MRIにて癌性腹膜炎を認めた。精査の結果、卵巣がんまたは腹膜がんと判断された。本人・家族ともに積極的な治療は希望せず、疼痛と腹水による症状緩和を中心とした方針が望まれた。
病院で腹水穿刺を受けるも、今後の生活は「自宅で過ごしたい」との本人・家族の希望が強く、在宅医療への移行が検討された。ケアマネ・医療チームとの協議の上、訪問診療の導入が決定した。
介入内容と経過
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定期的な訪問診療により、疼痛コントロールと全身状態の観察を実施
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腹水の増加に応じて適宜腹水穿刺を行い、呼吸苦や腹部膨満感を軽減
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オピオイドを用いた疼痛緩和を行い、生活の質を維持
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訪問看護と連携し、日常的な体調管理と家族への支援を強化
医療対応の詳細
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腹水穿刺による症状緩和
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疼痛コントロール(オピオイドを含む)
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訪問看護による体調観察・服薬管理
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家族への在宅看取り支援
支援のポイント
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がん末期の患者に対しては、治療方針よりも「いかに安心して過ごせるか」が重要
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腹水穿刺など症状緩和を継続的に行うことで、自宅療養を維持できた
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家族と医療チームが「在宅看取り」という共通認識を持つことで、意思決定が円滑に進んだ
考察
本症例は、進行性卵巣がんの末期患者が「治療よりも在宅療養」を強く希望したケースである。訪問診療と訪問看護が介入することで、苦痛緩和と生活の質が維持され、最期を自宅で迎えることができた。在宅医療は本人だけでなく、家族の希望をも尊重し実現するための重要な選択肢である。
付記情報
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疾患種別:腫瘍性疾患(婦人科がん)
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病名:卵巣がん(進行性)、癌性腹膜炎
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医療処置:腹水穿刺
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エリア:名古屋市守山区
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生活環境:長男夫婦・孫と同居、長女も区内在住
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医療負担割合:1割
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専門医介入:病院での精査・加療歴あり
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公費負担医療:該当なし
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障害者手帳・認定情報:該当なし