在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/09/30
「内縁の夫と共に暮らす高齢女性、筋膜内血腫により通院困難となったケース」
基本情報
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年齢・性別:81歳・女性
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居住地:名古屋市中区
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家族構成:本人と内縁の夫の二人暮らし
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保険・福祉情報:後期高齢者医療保険(1割負担)、要支援1(1割負担)
主病・健康状態
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左大腿部筋膜内血腫
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高血圧症
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高尿酸血症
導入の背景
殿部から左大腿にかけての痛みが数週間続き、次第に悪化してADLが低下。受診した際には大腿部に腫脹と皮下血腫を認め、画像検査により左深大腿動脈の枝からの出血による径7cm大の血腫形成が疑われた。入院加療が検討されたが、同居する内縁の夫が認知症で一人にできない状況であり、共依存的な生活環境から入院を拒否。自宅で安静を保ちながら経過観察する方針となった。再検査では血腫は縮小傾向にあったが、通院困難なため訪問診療を導入した。
介入内容と経過
訪問診療開始時には服薬コンプライアンスが不良であり、鎮痛薬の過量使用が懸念された。そのため、訪問看護・薬剤師と連携して服薬管理を強化し、必要に応じて血液検査を行いながら全身状態を観察した。
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左大腿部筋膜内血腫:血腫は縮小傾向を示し自然治癒に近い状態。疼痛コントロールはロキソニンから腎機能を考慮してカロナールへ変更。
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高血圧:アジルバからエンレストへ変更し、血圧変動に応じて適宜調整。
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高尿酸血症:尿酸値上昇と腎機能の悪化を認めたため、フェブリクを導入。
医療対応の詳細
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服薬管理体制の強化(薬剤師・訪問看護との連携)
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疼痛コントロール薬の調整
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血液検査による状態把握
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腎機能や血圧に応じた内服調整
支援のポイント
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認知症の内縁の夫と共依存的な生活をしているため、本人の治療と並行して生活環境面の配慮が必須であった。
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服薬コンプライアンス不良への対応は、訪問看護や薬剤師を交えた多職種連携により改善を図った。
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通院困難例では、疼痛や慢性疾患管理を在宅で継続できる仕組みづくりが重要である。
考察
本症例は、高齢女性が通院困難な状況に陥りながらも、訪問診療を導入することで在宅療養を維持できた事例である。血腫の自然治癒傾向を確認しつつ、疼痛管理や慢性疾患への対応を多職種で支えたことが奏功した。生活環境における介護力の脆弱さを踏まえた支援体制の構築が、在宅医療継続の鍵となる。
付記情報
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疾患種別:循環器系・代謝性疾患
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病名:左大腿部筋膜内血腫、高血圧症、高尿酸血症
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医療処置:該当なし
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エリア:名古屋市中区
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生活環境:内縁の夫と二人暮らし(夫は認知症)
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医療負担割合:1割
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専門医介入:通院歴あり(整形外科)
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公費負担医療:該当なし
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障害者手帳・認定情報:該当なし