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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

〜嚥下機能を守り、“食べる喜び”を在宅で〜  多職種による支援で「口から食べる」をあきらめない

コラム2025/09/25

〜嚥下機能を守り、“食べる喜び”を在宅で〜 多職種による支援で「口から食べる」をあきらめない

▶︎ 約6分で理解できる動画解説

https://d.kuku.lu/fav5ed6nm

 「最後まで口から食べたい」。
これは多くの高齢者やご家族が抱く、切実で自然な願いです。

しかし、加齢や疾患の影響により嚥下機能(飲み込みの力)が低下し、誤嚥性肺炎を繰り返す方も少なくありません。そのたびに「点滴や胃ろうのほうが安全では」と悩み、つらい決断を迫られる――そうした現実が、在宅の現場でも繰り返されています。

在宅医療では、医師だけでなく、歯科医師・歯科衛生士・管理栄養士・薬剤師・言語聴覚士(ST)などが連携し、“食べる支援”を多角的にサポートします。
なかでもSTは、嚥下機能の専門家として、姿勢調整や嚥下訓練、食形態(形や固さ)の調整を指導。
「顎を引いて飲み込む」「とろみをつける」といった具体的な工夫をわかりやすく家族に伝え、在宅でも安心して経口摂取が続けられる環境を整えます。

制度のポイント

  • 居宅療養管理指導:歯科・薬剤師・栄養士が訪問し、口腔ケアや栄養管理を実施
  • 訪問リハビリ(言語聴覚士):嚥下評価・訓練を専門的にサポート
  • チームアプローチ:医療・介護の垣根を超えた連携が、在宅での「食べる」を支えます

導入事例:82歳女性の場合

脳梗塞後の後遺症で嚥下障害が残り、入院中には「経口摂取は危険」と説明されていた。
しかし、家族は「母にとって食べることは生きがい。一口でも口から食べさせてあげたい」と強く希望。

退院後、訪問診療に加え、以下のチーム支援を導入した。

  • 訪問歯科による口腔ケア
  • 訪問栄養士による献立・食形態の調整
  • 訪問STによる嚥下機能評価と訓練

その結果、刻み食やゼリー状の食事を少量ずつ安全に摂取できるようになり、食卓に笑顔が戻った。
ご家族からは「母が『おいしい』と言った瞬間、口から食べることの意味をあらためて実感した」との声があった。

まとめ

「食べること」は、単なる栄養摂取ではなく、生きる喜びそのもの。
在宅でも、あきらめずに“口から食べる”を支え続ける方法があります。
医療と介護の専門職が連携すれば、たとえリスクがあっても、本人と家族の願いに寄り添った支援が可能です。

食べる力が衰えはじめたときこそ、多職種による在宅支援の力が発揮されるタイミングです。

— 学びを定着させる復習に —

▶︎ 動画解説を見る(約6分)

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