基本情報
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年齢・性別:95歳・女性
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居住地:名古屋市東区
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家族構成:本人と長男の二人暮らし。次男夫婦は隣家在住(キーパーソン:次男)
保険・福祉情報
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医療保険:後期高齢者医療(1割負担)
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公費:福祉給付金資格者証あり
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介護保険:要介護4(1割負担)
診断名
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心原性脳梗塞
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嚥下機能障害
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慢性心不全
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心房細動
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誤嚥性肺炎後
導入の背景
老健入所後に意識レベル低下と片麻痺が出現し、急性期治療を経てリハビリ入院へ。入院中に誤嚥性肺炎・無気肺を合併し全身状態は不安定となった。
嚥下安全性が確保できず、病院側からPEG(胃瘻)造設が提案されたが、当初は家族の希望で経口中心+在宅での栄養管理を選択し、在宅看取りも視野に訪問診療を導入した。
介入内容と経過
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在宅移行後、訪問診療・訪問看護で嚥下状況と栄養摂取量を継続評価。誤嚥兆候、脱水、体重推移をモニタリング。
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家族は極力経口を試みたが、摂取量の不足と誤嚥リスクの持続により栄養管理の限界が明確化。
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主治医が「在宅継続のための手段」としてPEG造設を再提案。家族と再度目標(在宅継続・安楽)をすり合わせ、合意のうえ造設を実施。
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造設後は胃瘻からの栄養投与で摂取が安定。脱水や誤嚥性肺炎の再燃リスクが低下し、在宅生活を安定的に継続できている。
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次男夫婦(隣家)と連携し、投与手順・清潔操作・トラブル時の連絡フローを共有。夜間の不安も軽減した。
医療対応の詳細
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嚥下機能・誤嚥兆候の評価と経口可否の見直し
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胃瘻(PEG)造設の提案・意思決定支援・導入後の管理(サイトケア、投与計画、詰まり・漏れ対応)
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心不全・心房細動の併存管理(バイタル・浮腫・体重変動のモニタリング、内服アドヒアランス確認)
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訪問看護との役割分担:栄養投与手順の定着、家族指導、急変時の初期対応
支援のポイント
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目標ベースの意思決定:在宅継続・安楽を最優先に、経口維持と安全性のトレードオフを家族と可視化。
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PEG=延命の固定観念をほぐす:本ケースでは“在宅継続のための栄養ルート”として位置づけ、家族の心理的ハードルを低減。
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隣家支援を戦力化:キーパーソン(次男)を中心に、投与手順と連絡体制を平準化して不安を軽減。
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多職種の細かな連携:投与計画・体位・口腔ケア・便秘対策まで一体で運用し、合併症リスクを抑制。
考察
当初は「経口で最期まで」を志向していたが、在宅継続と安全性の両立には限界があった。PEGを“在宅という希望を守るための手段”に再定義したことで、栄養状態が安定し、誤嚥・脱水の再燃を抑えられた。
嚥下障害を伴う終末期・超高齢の在宅療養では、ゴール設定→選択肢の再評価→方針転換を柔軟に行える体制が鍵となる。
付記情報
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疾患種別:脳血管疾患・循環器疾患・嚥下障害
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病名:心原性脳梗塞、嚥下機能障害、慢性心不全、心房細動、誤嚥性肺炎後
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医療処置:胃瘻(PEG)管理
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エリア:名古屋市東区
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生活環境:長男と同居、次男夫婦は隣家(キーパーソン:次男)
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医療負担割合:1割
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専門医介入:急性期・回復期・在宅の各段階で連携あり
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公費負担医療:福祉給付金資格者証
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障害者手帳・認定情報:該当なし