在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/09/12
「パーキンソン病の在宅支援:二人暮らしの不安定さに備える医療・介護連携」
基本情報
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年齢・性別:86歳・女性
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居住地:名古屋市緑区
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家族構成:本人と次男の二人暮らし(夫は逝去、長男は横浜在住・キーパーソン)
保険・福祉情報
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医療保険:後期高齢者医療(1割負担)
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公費制度:特定医療費受給者証あり
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介護保険:要介護1(1割負担)
診断名
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パーキンソン病
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高血圧症
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心不全
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慢性腎臓病
導入の背景
パーキンソン病の発症以降、神経内科で外来フォローを継続してきたが、近年は動作緩慢・可動性低下が進み、外来通院が負担となっていた。
パーキンソン病そのものは専門医での継続治療を希望されているため、在宅では全身状態の見守りや服薬・体調管理などの“マイナートラブル対応”を担う形で訪問診療を導入した。
介入内容と経過
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在宅での定期評価:血圧・心不全兆候・浮腫・水分バランス・腎機能を継続評価し、内服や日常の過ごし方を助言。
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訪問看護との連携:ADLの変化、服薬アドヒアランス、転倒リスクを日常的に確認。必要時は福祉用具・環境調整を提案。
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家族状況を踏まえた備え:同居の次男に統合失調症があり、急な不調で支援が揺らぐ可能性を想定。チーム内で情報共有を密にし、レスパイト・入所・ショートの選択肢を常に検討可能な状態を維持。
医療対応の詳細
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心不全・高血圧・腎機能を踏まえた内服の微調整とモニタリング
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パーキンソン病に伴う生活上の困難(動作緩慢、嚥下・便秘傾向など)への助言
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体調急変時の連絡導線と往診/搬送判断の明確化
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多職種(訪看・ケアマネ・福祉)での定期カンファレンス
支援のポイント
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パーキンソン病は専門外来の継続治療+在宅での補完支援の二本立てが有効。
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本人の身体状況だけでなく、同居家族の精神疾患による揺らぎを前提に、代替支援(ショート・レスパイト・入所)を常時オプションとして準備。
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キーパーソンが遠方のため、“チームで支える”前提の情報共有とエスカレーション手順が安心感につながる。
考察
本事例は、高齢者の進行性神経疾患に加え、同居家族の精神疾患という二重の脆弱性を抱える在宅療養である。
訪問診療は、専門外来を補完しながら生活変動への即応性を高め、療養の場の選択(在宅継続/一時入所等)を柔軟に保つ“ハブ”として機能する。今後も多職種連携を基盤に、状態変化と家庭状況の両面を並走支援することが求められる。
付記情報
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疾患種別:神経疾患・循環器疾患・腎疾患
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病名:パーキンソン病、高血圧症、心不全、慢性腎臓病
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医療処置:特記なし(内服調整・モニタリング中心)
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エリア:名古屋市緑区
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生活環境:次男(統合失調症)と二人暮らし、長男がキーパーソン(遠方)
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医療負担割合:1割
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専門医介入:神経内科通院継続(パーキンソン病)
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公費負担医療:特定医療費受給者証
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障害者手帳・認定情報:該当なし