在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/09/12
「新型コロナ感染を契機に、体調・医療機器管理を在宅で一体化したケース」
基本情報
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年齢・性別:85歳・男性
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居住地:名古屋市守山区
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家族構成:妻と同居(キーパーソン:長女/北区在住。長男は兵庫県、次女は福井県)
保険・福祉情報
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医療保険:後期高齢者医療(1割負担)
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介護保険:要介護3(1割負担)
診断名
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うっ血性心不全
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肥大型心筋症
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非弁膜症性心房細動
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脳梗塞後遺症
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慢性閉塞性肺疾患(COPD)
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高血圧症
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睡眠時無呼吸症候群(ASV管理中)
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高尿酸血症
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認知機能障害(軽度)
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腰椎圧迫骨折(既往)
導入の背景
通院を前提に複数の慢性疾患を自宅で管理していたが、発熱を契機に救急搬送され、新型コロナウイルス感染症の診断となった。入院加療で呼吸症状は早期に落ち着いたものの、退院後も体力低下と認知面の不安が残存。
在宅酸素療法とASVを併用しており、日常の体調変化と医療機器の運用を、通院に頼らず自宅で継続的に把握する体制が必要と判断。家族の希望も踏まえ、訪問診療へ移行した。
介入内容と経過
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心不全・呼吸状態の悪化兆候を逃さないため、定期のバイタルチェックと必要時の血液検査を実施。
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在宅酸素・ASVの使用状況(装着時間、使用圧、違和感の有無等)を確認し、機器管理の不安に対してその都度助言。
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脳梗塞後遺症および軽度認知機能低下を踏まえ、**「急な変化に備えられる在宅医療の常備感」**を意識した関与を継続。
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遠方家族とも情報連携しつつ、主介護者である妻の心理的負担を軽減。急変時の連絡手順と往診可否を明確化して安心感を確保。
医療対応の詳細
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心不全・呼吸状態のモニタリング(SpO₂、脈拍、血圧、体重変動など)
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必要時の採血(腎機能・炎症反応・電解質等)
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在宅酸素・ASVの運用確認と使用上の指導
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急変時対応の導線整備(往診/搬送判断、家族連絡体制の明確化)
支援のポイント
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**「通院可能か」ではなく「自宅で安心して継続できるか」**を基準に支援設計を行う。
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医療機器の在宅運用(酸素・ASV)と体調管理をワンセットで捉えることで、受診負担を減らし悪化を予防。
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主介護者の不安を減らすには、定期訪問+急変時の連絡手順を明確化し、「いつでも相談できる」体感を作ることが有効。
考察
本事例は、感染症罹患後の体力・認知面の不安に対し、**訪問診療が「日常に寄り添う医療」**として機能した例である。複数疾患と在宅医療機器の管理を自宅で一体的に行うことで、通院に伴う負担や増悪リスクを軽減し、本人・家族双方の安心に資する結果となった。今後も、在宅酸素やASVなど機器管理を含むケースでは、医療・介護の連携により“常備感のある在宅体制”を構築することが重要である。
付記情報
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疾患種別:循環器疾患・呼吸器疾患・神経疾患
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病名:うっ血性心不全、肥大型心筋症、心房細動、COPD、睡眠時無呼吸症候群 ほか
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医療処置:該当なし
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エリア:名古屋市守山区
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生活環境:妻と同居、遠方家族あり(長男・次女)、キーパーソンは長女
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医療負担割合:1割
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専門医介入:該当なし
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公費負担医療:該当なし
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障害者手帳・認定情報:該当なし