在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/09/03
「独居高齢者における低栄養と服薬ミスへの包括的支援」
■ 基本情報
年齢・性別:86歳・女性
居住地:名古屋市千種区
家族構成:独居(娘は関東在住で頻繁な支援は困難)
■ 保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療(1割負担)
介護保険:要介護2(1割負担)
■ 診断名
- アルツハイマー型認知症
- 骨粗鬆症
- 低栄養
■ 導入の背景
近隣住民から「痩せて足取りが危うい」と地域包括に通報があり、ケアマネジャーが訪問したところ、生活環境の悪化が確認された。
台所には焦げついた鍋、冷蔵庫には賞味期限切れの食品が散乱し、複数の薬があちこちに置かれており服薬ミスが常態化していた。
本人は「食べている」と訴えるも、実際には買い物が困難で、菓子やパン中心の食生活に偏っていた。
娘とも相談の上、栄養管理と服薬管理の体制を整える必要があると判断し、訪問診療を導入することとなった。
■ 介入内容と経過
- 初回診察時の採血にてアルブミン低下と体重減少を確認
- 週3回の訪問看護を導入し、服薬を一包化およびカレンダー式ケースで管理
- 言語聴覚士(ST)による嚥下機能評価を実施
- むせ込みや誤嚥リスクが高いことが判明し、食事姿勢や一口量の工夫を本人・支援者へ指導
- 配食サービスの導入を検討し、栄養バランスの改善に取り組む
■ 医療対応の詳細
- 栄養状態の定期的モニタリング(採血・体重測定)
- 服薬管理(薬剤一包化・残薬チェック)
- STによる嚥下指導と誤嚥リスク対策
- 訪問看護による日常的な健康管理と生活支援
■ 支援のポイント
- 認知症高齢者の独居では、栄養不良と服薬ミスが生活破綻につながる大きなリスクとなる
- 医療・看護・リハ職が連携し、食事・服薬・生活環境を包括的に整えることが重要
- 家族が遠方に住む場合でも、近隣住民からの情報や地域包括の介入をきっかけに支援体制を早期に構築することが可能
■ 考察
本事例は、認知症と生活機能低下が重なり、独居生活の維持が危うくなっていた高齢者に対して、訪問診療と多職種連携で生活基盤を立て直したケースである。
「食べているから大丈夫」といった本人の認識と実際の栄養状態の乖離をどう補うかは、独居高齢者支援における大きな課題である。
本ケースは、医療介入と地域資源の組み合わせにより、本人の尊厳を保ちながら在宅生活を継続可能にした点で示唆に富む。
■ 付記情報
疾患種別:認知症・骨疾患・栄養障害
病名:アルツハイマー型認知症、骨粗鬆症、低栄養
医療処置:該当なし
エリア:名古屋市千種区
生活環境:独居、生活機能低下、娘は遠方在住
医療負担割合:1割
専門医介入:言語聴覚士(嚥下評価)
公費負担医療:該当なし
障害者手帳・認定情報:該当なし