コラム2025/08/28
通院困難の基準って? 〜訪問診療の対象を知っておこう〜
「まだ歩けるから、訪問診療は早すぎますよね?」
現場では、こうした質問をよく受けます。
ですが、訪問診療の対象は“寝たきりの方”だけではありません。
制度上は「通院が著しく困難であること」が基準とされており、その判断には身体的な状況だけでなく、認知機能の低下、精神的不安、付き添いの有無など、生活環境の要素も含まれます。
たとえば、以下のような方も対象となる可能性があります。
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杖や歩行器を使っていて外出が不安な方
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在宅酸素療法や人工透析を受けている方
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病状が進行し、外出の負担が大きくなっている方
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家族が付き添えず一人での通院が難しい方
訪問診療は「最期の手段」ではなく、外来通院が負担になり始めたときにこそ選択肢に入る医療サービスです。
制度上のポイント
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医療保険で利用可:訪問診療料(月2回以上の計画診療が基本)
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要介護認定がなくてもOK:医療的な必要性があれば導入可能
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外来・他院受診との併用も可:一部の通院と組み合わせながら使える
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導入の相談先:かかりつけ医、ケアマネ、地域包括支援センターなど
導入事例より
76歳・独居の男性。パーキンソン病の進行で転倒が増え、外出に強い不安を抱えるように。
病院の待合で長時間過ごすことにも疲れ、通院後は1日寝込むこともありました。
そこでケアマネから訪問診療を提案され、自宅での薬調整・診察に切り替えた結果、
「病院に行かないと診てもらえない」というプレッシャーから解放され、
気持ちにも余裕が生まれました。
まとめ
「まだ外出できるから大丈夫」と思っていても、日々の疲れや不安、支える家族の負担は着実に積み重なっていきます。訪問診療は、そうした**通院にともなう“見えにくい限界”**に早めに手を打つ手段です。
まずは「どんな場合に使えるのか?」という制度の正しい理解が、支援の第一歩につながります。
現場で迷うことがあれば、遠慮なく専門職にご相談ください。
出典:
・厚生労働省「在宅医療の推進に向けた取り組み」
・名古屋市医師会 訪問診療の手引き
・ちくさ病院 訪問診療部監修実例(社内資料)