在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/08/25
親子二人暮らしを支える在宅医療:90歳女性の訪問診療導入事例
■ 基本情報
年齢・性別:90歳・女性
居住地:名古屋市千種区
家族構成:独居。夫は他界。長男は隣に居住、次男は同区内、長女は県外在住。
■ 保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療(1割負担)
介護保険:要介護2(1割負担)
■ 診断名
・2型糖尿病
・高血圧症
・脂質異常症
・後大脳動脈狭窄症
■ 導入の背景
長年、地域の病院に通院しながら糖尿病や高血圧症の管理を行っていたが、血圧は外来受診時に170〜190/70mmHg、自宅やデイケアでは140〜150/70mmHgと変動が大きかった。
その後、帯状疱疹と熱傷を契機に気力低下・倦怠感・持続する違和感がみられるようになり、体調全般が不安定となった。ちょうどその頃、既に当院訪問診療を利用していた息子と同時に「自宅で医療を受けたい」と希望があり、訪問診療を導入することとなった。
■ 介入内容と経過
訪問診療開始後は、栄養状態・倦怠感・血圧管理を中心に観察を継続。
本人はこれまで息子の生活を支える役割を担っていたが、本人自身の状態が悪化すれば親子二人の在宅生活が立ち行かなくなる可能性がある。
そのため、単独の患者支援ではなく、親子二人の生活全体をどう維持していくかが大きな課題であった。ケアマネや訪問看護、デイサービス事業所とMCS等のICT連携ツールを活用し、迅速な情報共有を行いながら継続的に支援を進めている。
■ 医療対応の詳細
・血圧・倦怠感の観察
・服薬状況と生活習慣の確認
・他職種との定期的な情報共有
・緊急時の往診・搬送体制の整備
■ 支援のポイント
・独居に近い生活だが、隣に住む長男や同区内の次男との関わりを活かすことで、在宅療養の継続が可能となった
・患者本人だけでなく、息子との「親子二人の生活」を支える視点が重要
・ICTツールを活用した多職種連携は、状態変化に即応できる体制づくりに有効
■ 考察
本事例は、高齢患者が独居に近い環境で生活を続ける中で、家族との相互依存関係が在宅療養に大きく影響することを示している。本人の体調変化がそのまま家族の生活基盤を揺るがすため、医療と介護の双方で「家族単位での支援」を設計する必要がある。訪問診療はその要となり、医療と生活の両面をつなぐ役割を果たしている。
■ 付記情報
疾患種別:生活習慣病・脳血管疾患
病名:2型糖尿病、高血圧症、脂質異常症、後大脳動脈狭窄症
医療処置:該当なし
エリア:名古屋市千種区
生活環境:独居、親子二人暮らしの生活基盤を支える形での介入
医療負担割合:1割
専門医介入:通院歴あり(地域病院)
公費負担医療:該当なし
障害者手帳・認定情報:該当なし