在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/08/25
高齢夫婦二人暮らし。支え合う生活の限界を迎えたがん末期の在宅療養支援
■ 基本情報
年齢・性別:86歳・女性
居住地:名古屋市千種区
家族構成:本人と夫(同年代)の二人暮らし。長男は車で1時間ほどの距離に在住
■ 保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療(1割負担)
介護保険:要介護1(1割負担)
■ 診断名
横行結腸がん(再発)
肝転移
■ 導入の背景
横行結腸がんに対し手術と抗がん剤治療を受けたが、副作用の強さから治療継続は困難となった。以降、肝転移の進行に伴い全身倦怠感や経口摂取不良が進行。
身の回りのことは夫が担っていたが、夫も高齢で体力的限界があり、在宅生活の継続に不安が大きかった。ケアマネにとっても、医療的な関与が弱いまま在宅見取りを希望する本人・家族をどのように支えるかが課題であった。
■ 介入内容と経過
訪問看護師から「在宅見取りを視野に訪問診療導入が必要」との提案があり、ケアマネも同意。本人・夫・長男と話し合い、訪問診療を導入することとなった。
定期的に体調評価を行い、痛みや倦怠感に対して薬物調整を実施。生活の質を維持しながら、診療レポートをケアマネへ共有することで介護側との連携を強化した。急変時には訪問看護と連携し、往診・搬送判断を迅速に行える体制を整備。
また、夫に対しては介護の工夫点や予測される体調変化を診察時に伝えることで、「一人で抱え込んでいる」感覚を和らげる支援を行った。
■ 医療対応の詳細
・月2回の定期訪問診療
・疼痛および倦怠感に対する薬物調整
・訪問看護との連携による状態変化の早期把握
・急変時の往診・搬送対応体制の確立
■ 支援のポイント
・高齢夫婦二人暮らしでは、介護者自身が高齢であることから支援限界が早期に表面化する
・遠方に住む家族は「十分に支援できない罪悪感」を抱きやすいため、訪問診療による医療的伴走が心理的安定につながる
・ケアマネにとっては、在宅継続の可否判断が難しいケースであり、訪問診療が「現実的に在宅を支える手段」となる
■ 考察
本事例は、がん末期患者における在宅療養が「高齢夫婦だけでの支え合い」では限界に達する現実を示している。
医療職の定期介入が加わることで、介護者の安心感が高まり、ケアマネも在宅生活継続の見通しを持てるようになった。
在宅見取りを希望するケースでは、患者本人だけでなく、介護者支援・遠方家族への説明・ケアマネの安心材料としても、訪問診療が大きな役割を果たすことが再確認された。
■ 付記情報
疾患種別:消化器系がん
病名:横行結腸がん(再発)、肝転移
医療処置:薬物療法による緩和ケア
エリア:名古屋市千種区
生活環境:高齢夫婦二人暮らし(長男は遠方在住)
医療負担割合:1割
専門医介入:がん手術・抗がん剤治療歴あり
公費負担医療:該当なし
障害者手帳・認定情報:該当なし