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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

コラム2025/08/25

高齢者に多くみられる血液疾患~貧血と悪性リンパ腫~

血液の異常は、全身の臓器や機能に大きな影響を与えるため、高齢者の健康管理において非常に重要です。なかでも「貧血」と「悪性リンパ腫」は、介護・医療職が日常業務の中で遭遇する頻度が高い疾患です。両者は原因も経過も大きく異なりますが、いずれも「小さな変化」に早く気づくことが重症化を防ぐ鍵となります。

■貧血の基本的な理解

貧血とは、赤血球やヘモグロビン濃度が基準値より低下した状態を指します。赤血球は酸素を全身に運搬する役割を担うため、減少すると全身の酸素供給が不足し、様々な症状が現れます。

高齢者では、鉄の利用障害・骨髄の異常・加齢による造血能低下などが主な原因となります。

主な症状

  • 動悸、息切れ、倦怠感、易疲労感
  • 高齢者では症状が目立ちにくく、日常動作の遅さや活動性低下として現れることが多い
  • 胸痛(狭心症に類似)、物忘れや注意力低下(認知症様症状)、食欲不振など非典型的な症状も

分類と原因

  1. 鉄欠乏性貧血
    胃腸からの慢性的な出血(消化器がん・潰瘍など)や栄養不足で発生。
  2. 慢性疾患に伴う貧血
    悪性腫瘍、感染症、膠原病などで炎症が続くと、鉄がうまく利用できず発症。
  3. 骨髄性疾患による貧血
    骨髄異形成症候群(MDS)、再生不良性貧血など。造血そのものが障害される。
  4. 老人性貧血
    加齢による赤血球産生の低下やホルモン感受性の低下。原因が不明で治療困難なケースも多い。

現場での観察ポイント

  • 顔色や皮膚の蒼白
  • 動作時の息切れや疲れやすさ
  • 活動性の低下や意欲減退
  • 認知機能や食欲の変化

介護職は「最近よく休むようになった」「食欲が落ちている」「顔色が悪い」などの変化を早期に医療者へ共有することが大切です。

悪性リンパ腫の基本的な理解

悪性リンパ腫は、白血球の一種であるリンパ球ががん化して増殖する疾患です。血液腫瘍の一つで、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に大別されます。

主な症状

  • リンパ節腫脹:首、腋窩、鼠蹊部などに痛みのないしこりが出現
  • 数週間から数か月かけて徐々に腫大し、全身に広がることも
  • 発熱、体重減少、寝汗(B症状)
  • 皮疹やかゆみ、臓器への浸潤による圧迫症状(血流障害・気道閉塞・麻痺など)

病変の広がり

リンパ節以外にも、肺、消化管、中枢神経、眼窩などに発生することがあります。特に高齢者では診断が遅れやすく、進行した段階で見つかるケースも少なくありません。

治療

  • 化学療法(CHOP療法など)
  • 放射線治療(病変が限局している場合)
  • 造血幹細胞移植(再発例や若年患者に多いが、高齢者では体力の制約あり)

治療により長期生存が可能となるケースも増えていますが、副作用への対応や支持療法が欠かせません。

現場での観察ポイント

  • 首やわきの下にしこりがないか(視診・触診で気づける場合あり)
  • 発熱や寝汗、急な体重減少の有無
  • 皮膚のかゆみ、全身倦怠感
  • 進行に伴う呼吸苦や麻痺などの二次症状

介護職は「しこりがあるが痛がらない」「夜に汗をかく」「痩せてきた」といった変化に注意を払い、医師へ早期に報告することが重要です。

まとめ

  • 貧血は日常的な活力低下や認知機能の悪化の背景に潜むことがあり、特に高齢者では見逃されやすい。
  • 悪性リンパ腫は無痛性のしこりやB症状が早期のサイン。介護現場での観察と報告が早期診断につながる。

介護・医療職にとって、これら血液疾患は「気づき」が最も重要な役割となります。日々の何気ない会話やケアの中での変化を敏感に察知し、適切に医療へつなぐことが、ご利用者の命を守る大きな力となります。