在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/08/19
集合住宅4階で独居生活、心不全患者への在宅支援
■ 基本情報
年齢・性別:84歳・女性
居住地:名古屋市港区
家族構成:独居(築40年の集合住宅4階、エレベーターなし)
■ 保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療(1割負担)
介護保険:要介護3(1割負担)
■ 診断名
心不全
慢性腎不全
高血圧症
■ 導入の背景
外来通院を続けていたが、集合住宅4階までの階段昇降が年々大きな負担となり、特に夏場には途中で息切れし、壁に手をつきながら休むことが増えていた。
買い物は週1回程度で、重い荷物は近隣住民に頼ることもあった。デイサービスは体力低下により中止となり、自宅にこもる時間が長くなっていた。
食事は調理の手間を避け、カップ麺や総菜パンに偏りがちであり、服薬も時折忘れることがあった。
地域包括支援センターから相談を受けたケアマネが訪問診療を提案したが、本人は「まだ病院に行ける」と拒否的であった。
そこで主治医が導入前の説明を兼ねて自宅を訪問し、実際に診察の流れを示した。本人も「これなら負担なく受けられる」と納得し、訪問診療の導入につながった。
■ 介入内容と経過
訪問診療では心不全の悪化予防を目的として利尿薬の調整を行った。
体重と血圧を毎日測定し、訪問看護が週1回その記録を確認。浮腫や呼吸状態の変化を早期に把握し、入院を未然に防ぐ対応を実施した。
また、配食サービスを導入して塩分制限食を継続。服薬はカレンダー式ボックスにセットし、訪問時に残薬確認も行った。
■ 医療対応の詳細
・利尿薬の内服調整
・訪問看護との連携による体重・血圧モニタリング
・配食サービスによる食事療法支援
・服薬管理と残薬確認
■ 支援のポイント
・居住環境(階段昇降困難)に配慮し、外来通院を不要とする支援体制の確立
・心不全の増悪予兆を在宅で把握し、入院回避につなげる早期介入
・食事・服薬・日常管理を訪問診療・訪問看護・配食サービスで多角的にサポート
■ 考察
本事例は、高齢独居での居住環境制約(集合住宅4階、エレベーターなし)が外来通院継続を困難にした典型例である。
訪問診療と看護の介入により、日常的なモニタリングと生活支援が可能となり、結果として入院を回避しながら生活の安定が実現した。
在宅医療は病状管理のみならず、住環境や生活習慣への介入を通じて、患者が安心して暮らし続ける基盤を支える役割を果たすことが確認された。
■ 付記情報
疾患種別:循環器系疾患・腎疾患
病名:心不全、慢性腎不全、高血圧症
医療処置:該当なし
エリア:名古屋市港区
生活環境:独居、集合住宅4階、エレベーターなし
医療負担割合:1割
専門医介入:該当なし
公費負担医療:該当なし
障害者手帳・認定情報:該当なし