在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/08/07
同居家族の入院により在宅生活が困難に、訪問診療から同居転居へ至ったがん患者の一例
■ 基本情報
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年齢・性別:75歳・男性
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居住地:名古屋市西区
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家族構成:妻・長男と3人暮らし(長女は東京在住)
■ 保険・福祉情報
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医療保険:国民健康保険(2割負担)
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介護保険:要介護2(1割負担)
■ 診断名
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S状結腸憩室穿孔
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S状結腸癌
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胆嚢癌
■ 導入の背景
S状結腸の一部切除および人工肛門造設術を受け、のちに閉鎖。経過観察中に胆嚢腫瘍が疑われ、腹腔鏡下胆嚢摘出術が行われた。病理検査により胆嚢癌と診断され、開腹手術とリンパ節郭清が実施された。
さらに、痛風による入院を経て退院後も強い関節痛と歩行困難が残存し、通院が困難な状態となったため、訪問診療が開始された。
■ 介入内容と経過
訪問診療と訪問看護による在宅支援を開始。家族の介護体制を支えながら診療を継続していたが、介護の中心を担っていた妻が入院。
長男ひとりでは介護の継続が困難となり、家族内での話し合いを経て、患者は東京在住の長女と同居する選択をしたため、訪問診療を終了した。
■ 医療対応の詳細
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疼痛に対する内服調整
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訪問看護と連携した日常の体調管理
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家族の介護力に応じた対応と助言
■ 支援のポイント
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家族構成や支援者の健康状態は、在宅医療の継続に大きな影響を与える
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医療だけでなく、介護力の変化にも即応できる体制が求められる
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転居を伴うケースでは、新たな地域での医療体制への橋渡しが必要となる
■ 考察
本事例は、患者の身体的状態に加え、家族の介護力が在宅療養の継続に直結することを示している。とくに在宅療養の維持には、本人の病状だけでなく、家族の生活状況の変化にも着目する必要がある。訪問診療チームは、患者を取り巻く生活環境の変化を早期に察知し、必要に応じて支援方針を柔軟に見直す姿勢が求められる。
■ 付記情報
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疾患種別:消化器系・腫瘍性疾患
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病名:S状結腸癌、S状結腸憩室穿孔、胆嚢癌
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医療処置:人工肛門造設・閉鎖、胆嚢摘出、開腹手術・郭清術
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エリア:名古屋市西区
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生活環境:妻・長男と同居(のちに長女と同居へ転居)
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医療負担割合:2割
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専門医介入:術後経過観察あり
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公費負担医療:該当なし
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障害者手帳・認定情報:記載なし