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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/08/07

奥様の入院を契機に在宅看取りへ、夫婦同居高齢者に対する終末期支援の一例

■ 基本情報

  • 年齢・性別:87歳・男性

  • 居住地:名古屋市中川区

  • 家族構成:妻と2人暮らし

  • キーパーソン:長女(隣県在住)、次女(同区内在住)


■ 保険・福祉情報

  • 医療保険:後期高齢者医療(1割負担)

  • 介護保険:要介護2(1割負担)

  • 公費負担:丸福適用あり


■ 導入の背景
既往として心不全と慢性腎臓病(CKD)を抱えており、過去には徐脈や左脚ブロックを契機に心臓再同期療法(CRT-P)を導入。ペースメーカーの遠隔モニタリングを活用しながら、定期的に専門外来を受診していた。
また、閉塞性動脈硬化症(ASO)も併発しており、抗凝固薬と抗血小板薬の併用処方が継続されていた。
本人の体調は安定していたが、同居する妻が感染症により急遽入院したことを契機に、自宅での生活に支障が生じるようになった。食事摂取量の低下や脱水傾向も認められ、家族の強い希望により訪問診療を導入することとなった。


■ 介入内容と経過
訪問診療はもともと妻を対象に実施していたが、家庭環境の急変に伴い、夫である本人への支援が追加された。
導入当日にはすでに全身状態の悪化が見られ、医師は必要に応じて点滴などの緩和的ケアを提供。
その後まもなく心肺停止となり、医療的判断として老衰と捉え、ご自宅での看取りとなった。


■ 医療対応の詳細

  • 緩和目的の点滴対応

  • 家族への病状説明と同意形成

  • 医療的処置よりも本人・家族の意向を重視した終末期支援


■ 支援のポイント

  • 感染症など外的要因により、在宅生活が急速に困難化することがある

  • 家族構成や既存の支援体制をふまえ、医療・介護の連携を柔軟に構築することが重要

  • 終末期においては、医学的な延命よりも、家族の希望や本人の尊厳を尊重した対応が求められる


■ 考察
本事例は、高齢夫婦のどちらかが急変した際に、もう一方の生活が脆弱化するリスクを示している。特に、普段の生活を担う配偶者が不在となった場合、在宅生活の継続が難しくなり、速やかな医療介入と生活支援の構築が不可欠となる。
また、終末期における訪問診療の役割は、医学的処置以上に「本人と家族が望むかたちでの最期」を実現することであり、本ケースのように、ご自宅での穏やかな看取りが支えられたことは、在宅医療の重要な意義を物語っている。


■ 付記情報

  • 疾患種別:循環器系疾患・腎疾患

  • 病名:心不全、慢性腎臓病(CKD)、ASO

  • 医療処置:CRT-P植え込み、遠隔モニタリング、点滴対応

  • エリア:名古屋市中川区

  • 生活環境:妻と同居

  • 医療負担割合:1割

  • 専門医介入:心臓デバイス外来と連携

  • 公費負担医療:丸福適用

  • 障害者手帳・認定情報:該当情報なし(記載なし)