コラム2025/08/07
医療用麻薬って怖い?がん疼痛緩和の基本〜「中毒になる」「最期が近い」の誤解を解く〜
「麻薬を使う=もう長くないってことですよね?」
「依存するから怖い。なるべく我慢したほうがいいんじゃないですか?」
がん疼痛に対して使われる医療用麻薬(オピオイド)に対する不安や誤解は、今でも根強く残っています。ケアマネさんやご家族からの相談でも、よくこの話題が出てきます。
制度解説:医療用麻薬=安全で計画的な痛みの緩和手段
医療用麻薬は、厚労省や学会のガイドラインに基づき、安全に、適切な量で計画的に使用することが定められている治療薬です。
用量は徐々に調整し、「痛みを抑える」ことが目的であって、意識を落としたり命を縮めることはありません。
また、「中毒」や「依存」についても、がん性疼痛への使用においては極めてまれであることが世界的に明らかになっています。
導入事例:前立腺がんの男性、医療用麻薬で在宅生活を継続
74歳男性。前立腺がんが骨転移し、腰痛と下肢のしびれで日常生活が困難に。家族は「麻薬を使ったら戻れなくなるのでは」と不安を感じていたが、医師から「眠くなる薬ではない」「依存性も少ない」と丁寧な説明を受け、導入を決断。
モルヒネ製剤を服用し始めて数日で疼痛が改善し、車椅子での外出も再開。ご本人は「もっと早く使えばよかった」と話され、半年以上穏やかな在宅生活が続いた。
まとめ:「痛みを我慢する」のではなく「痛みとともに生きる」ために
医療用麻薬は、「命の終わりを早める薬」ではなく、「命の時間を穏やかに支える薬」です。
ケアマネジャーさんからも、ぜひ「怖い薬」ではなく「選べる選択肢」として、安心して提案できる存在として覚えておいていただけたらと思います。