在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/07/15
介護サービス導入を拒否されたケースで、訪問診療がつないだ医療と生活の支援
基本情報
年齢・性別:80歳・男性
居住地:名古屋市東区
家族構成:本人・妹2人・弟の4人暮らし(キーパーソン:弟)
保険情報:後期高齢者医療(1割負担)、介護保険 要介護5(1割)、福祉給付金あり
導入の背景
もともとケアマネジャーから介護サービスの導入提案があったが、本人と兄弟姉妹による支援体制で十分とする強い希望があり、サービスは導入されなかった。
右下肢蜂窩織炎による入院後、杖歩行まで回復していたが、徐々にADLが低下。やがてベッド上中心の生活となり、通院が困難に。
パーキンソニズムや認知症に対しては整形外科内科、心不全に対しては内科医院で通院治療を受けていたが、身体状況の悪化により訪問診療へと切り替えられた。
介入内容と経過
訪問診療開始後、介護負担軽減を目的として短期のレスパイト入院を実施。退院後の定期訪問では、ムセはあるものの状態は安定していた。
しかし、しばらくしてムセが強くなり、発熱も確認。誤嚥性肺炎が疑われ、救急搬送となった。
入院先での検査・加療により、経口摂取が困難と判断され、感染リスクへの備えとして中心静脈カテーテル(CV)を挿入。
その後、療養病院への転院を経て、守山区の施設へ入所。訪問診療は退院とともに終了した。
支援のポイント
介護サービスの導入が叶わなかった中でも、訪問診療が定期的な医療フォローと急変時の判断を支えた。
また、家族の強い意向に配慮しつつも、必要時には医療側が介入し、段階的に入所移行へと導いた点において、訪問診療の「橋渡し機能」が発揮された事例といえる。
考察
医療と生活の狭間で、家族の意向が強いケースでは、介護サービスの導入が遅れがちである。
そうした環境下でも、訪問診療は医療的フォローに加え、生活変化を捉えるための観察機能を果たし、適切なタイミングでの支援切り替えを促す役割を担っていた。
付記情報
疾患種別:慢性疾患/神経疾患/精神疾患
病名:レビー小体型認知症、パーキンソニズム、慢性心不全、高血圧症、逆流性食道炎
医療処置:訪問中は特になし(入院時にCV挿入)
エリア:名古屋市東区
生活環境:兄弟姉妹と4人暮らし(家族の支援強め)
医療負担割合:1割(福祉給付あり)
専門医介入:整形外科・内科にて通院歴あり
公費負担医療:福祉給付金
障害者手帳・認定情報:要介護5