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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/07/15

入所直前のわずかな在宅期間──それでも訪問診療が必要な理由

基本情報
年齢・性別:91歳・女性
居住地:名古屋市中川区
家族構成:独居(キーパーソン:身元保証会社)/弟は他県在住
保険情報:後期高齢者医療(1割)/要介護2(1割)

導入の背景
もともと高血圧でクリニックに通院していたが、徐々に通院が困難に。デイサービスでの血圧上昇や、自宅での転倒・裂傷により、「毎日通院して創部洗浄が必要」と指示されるも通院継続が難しい状態となった。
また、住まいが取り壊し予定の賃貸住宅であったことから、施設入所に向けた準備が進むなかで、在宅支援の一環として訪問診療を導入した。

介入内容と経過
訪問診療では、裂傷のケアや健康状態の観察を実施。生活環境としては冷房機器が未使用であり、夏場の脱水リスクが高かった。
ある日、宅配弁当のスタッフが異変を察知し、身元保証会社を通じて訪問対応を依頼。水分・食事・内服が全く摂れていない状態で倒れている本人を確認。翌日にはデイサービススタッフが脱水と意識障害を確認し、救急搬送・入院となった。
回復後、施設へ入所し、訪問診療は終了となった。

支援のポイント

  • 異変の発見者が限定される独居・保証会社対応のケースでは、日常的な見守り体制が不十分なことも多く、訪問診療による“医療的見守り”の役割が大きい。

  • 室温管理や水分摂取の不備など、認知症に起因する生活環境上のリスクも医療職が介入することで早期に把握・対処が可能。

  • 入所が決まっていたとしても、在宅で過ごす「わずかな期間」に対して医療支援があることで、急変時の対応や情報連携が円滑となり、安心した移行支援につながる。

考察
この事例は、「施設入所予定だから」「あと数週間の在宅だから」といった理由で支援を控えるのではなく、在宅にいる間の“今”にこそ医療的な支援が必要であることを示している。
独居で身寄りが薄い方ほど、たとえ短期間であっても訪問診療が入ることの意義は大きい。

付記情報

疾患種別:慢性疾患/認知症

病名:認知症、高血圧症

医療処置:裂傷の処置(化膿部のケア含む)

エリア:名古屋市中川区

生活環境:独居、冷房未使用、退去予定の賃貸住宅

医療負担割合:1割(後期高齢者医療)

専門医介入:なし

公費負担医療:なし

障害者手帳・認定情報:不明