在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/07/08
経鼻経管栄養での看取りを支えたケース──看多機と連携した穏やかな最期
■ 基本情報
年齢・性別:96歳・男性
居住地:名古屋市守山区(看護小規模多機能型居住施設を利用)
家族構成:長男(名古屋市東区)、長女(守山区)
保険情報:後期高齢者医療(1割負担)、福祉給付金資格者証
介護保険:要介護5(1割負担)
■ 訪問診療開始の経緯
2022年7月、意識障害にて救急搬送され、脳梗塞・誤嚥性肺炎・胸膜炎と診断され入院となった。治療により意識はある程度回復したものの、右半身の不全麻痺、嚥下障害、発語困難といった後遺症が残存。経口摂取は困難となり、経鼻経管栄養(NGチューブ)による栄養管理が開始された。
退院後は看護小規模多機能型居住施設に入所。同時に訪問診療を希望され、2022年10月より当院が介入を開始した。
■ 介入内容と経過
以後、月2回の訪問診療を継続。脳梗塞後遺症に伴う生活支援と、誤嚥性肺炎の再発予防を主眼に、嚥下状態・栄養状態・呼吸状態の観察を継続した。
NGチューブ管理や吸引といった処置を継続しながら、体調変化に細かく対応できるよう、看護小規模多機能施設と密に連携していた。
■ ご家族の意向と看取りの対応
2022年末、当院医師よりご長男へ病状説明を実施。ご家族の意向としては、胃ろう造設やCVポート設置といった延命的処置は希望せず、末梢点滴の範囲で穏やかな経過を見守りたいとのことであった。
その後、2023年1月下旬に呼吸停止が確認され、当院医師が訪問にて死亡確認。看護小規模施設と連携しながら、ご本人・ご家族の希望に沿った最期を支えることができたケースである。
■ 支援のポイント
・NGチューブでの栄養管理が必要な状態でも、看多機と訪問診療が連携することで、在宅看取りを実現できる体制を整備
・早期から家族と方針を共有し、延命を望まない希望に沿った終末期支援を実施
・医療処置の目的と限界を明確化し、「できること」に焦点を当てた関わり
■ 考察
医療処置を継続しながらも、自然な経過を見守る終末期支援には、本人の尊厳と家族の安心感を両立させるケア体制が求められる。この事例では、看多機と訪問診療が連携することで、ご本人・ご家族の「望ましい最期」に寄り添うことができた。
■ 付記情報
疾患種別:神経疾患/呼吸器疾患/誤嚥関連
病名:脳梗塞、誤嚥性肺炎、胸膜炎、嚥下障害
医療処置:NGチューブ管理、吸引、末梢点滴(看取り時)
エリア:名古屋市守山区
生活環境:看護小規模多機能型施設入所
医療負担割合:医療1割・介護1割
専門医介入:急性期病院にて神経内科・呼吸器内科介入歴あり
公費負担医療:福祉給付金資格者証あり
障害者手帳・認定情報:記載なし(該当不明)