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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

全身に血液を送り届ける循環器の仕組みと重要性

コラム2025/07/08

全身に血液を送り届ける循環器の仕組みと重要性

介護・医療の現場では、「血圧」「脈拍」「チアノーゼ」「浮腫」など、循環器系の状態を示すバイタルサインを日常的に観察する場面が多くあります。こうしたサインを正しく読み取るには、その背景にある循環器の基本構造や役割を理解しておくことが欠かせません。今回は、現場で実践に活かせる知識として、循環器の仕組みをわかりやすくご紹介します。

心臓:全身に血液を送り出す中枢ポンプ

心臓は、全身へ血液を送り出すポンプとして働く重要な臓器です。成人では握りこぶしほどの大きさで、重さはおよそ200~300g。1分間に60〜80回拍動し、1分間に約5リットルの血液を全身へ循環させています。

心臓は「右心房」「右心室」「左心房」「左心室」の4つの部屋から構成され、それぞれに異なる役割があります。

  • 右心室:静脈血を肺に送り、酸素と二酸化炭素の交換を行う「肺循環」の出発点。
  • 左心室:酸素を取り込んだ血液を全身に送り出す「体循環」の出発点で、最も強い力を持っています。

また、心房と心室、心室と動脈の間には「心臓弁」があり、血液が逆流しないように制御されています。これにより、血液は一方向に効率よく流れ続けることができます。

血管:血液を運ぶ3つの通り道

心臓から送り出された血液は、血管を通じて全身に届けられます。血管は大きく「動脈」「静脈」「毛細血管」に分類され、それぞれが異なる機能を担っています。

動脈

心臓から全身へ血液を運ぶ血管で、高い圧力に耐える必要があるため、血管壁の中膜が発達しています。中膜は平滑筋や弾性線維から構成されており、血圧変化への対応力を持っています。脈拍を感じられるのは動脈です。

静脈

全身から心臓へ血液を戻す役割を担います。血圧が低いため中膜は薄く、血流は緩やかです。逆流を防ぐため、静脈内には逆流防止弁があり、特に下肢の静脈では重力に逆らって血液を戻すうえで重要です。静脈弁の機能が低下すると、「下肢静脈瘤」や「浮腫」の原因になります。

毛細血管

動脈と静脈の間にある最も細い血管で、血液と細胞の間で酸素・栄養の供給、老廃物の回収を担う重要な役割を果たします。構造は1層の内皮細胞でできており、「交換の場」として機能しています。

現場で知っておきたいポイント

  • 血圧や脈拍の急激な変動は、循環器系の異常を示している場合があります。
  • 手足の冷感やチアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色になる状態)は、末梢への血液供給不足のサインです。
  • 浮腫(むくみ)が見られる際は、心機能の低下や静脈・リンパのうっ滞が疑われます。
  • 呼吸困難や胸痛が突然生じた場合は、心筋梗塞や肺塞栓といった緊急性の高い疾患を想定する必要があります。

まとめ

循環器系は、酸素や栄養の供給、老廃物の排出といった生命維持に欠かせない働きを担っています。高齢者は循環器疾患のリスクが高いため、日々の観察において循環器の基礎知識を持っていることは非常に重要です。

今回の内容が、皆さまの現場でのケアや判断において少しでもお役に立てれば幸いです。