在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/07/01
「なんとなく不安」――その直感が訪問診療導入のタイミングに
基本情報
年齢・性別:89歳・女性
居住地:愛知県あま市
家族構成:長男夫婦との3人暮らし(キーパーソン:長男)/長女は他県在住/友人にケアマネジャー
保険・制度情報:後期高齢者医療(1割負担)、介護保険は新規申請中
導入の背景
長年、気管支喘息での通院治療を続けてきたが、日常的な息切れや呼吸苦に加え、近頃は活動量の低下と疲労感の増加が目立つように。
ご本人から「通院がしんどくなってきた」との声も上がり、あわせて家族からも「暮らしそのものに揺らぎが出てきている」との感覚があった。
急激な体調変化ではなかったが、今後の支えとして訪問診療の導入を決定した。
介入内容と経過
訪問開始後も体調の大きな悪化はなかったが、生活環境の中に医療的なリスクが潜んでいた。
とくに家族からは「空調が十分に使えていない」「日中は無人の時間が長く、見守りに不安がある」といった声が寄せられ、実際に本人の表情や活気にも乏しさが見られた。
食事摂取は固形物が困難で、水分やエンシュアの摂取が中心。吸入薬や内服薬の服用も難しくなり、貼付剤やエアロゾルタイプへの変更などの工夫を行った。
しかしながら、在宅生活の継続は難しいと判断され、ご家族との相談のうえ、入院という判断がなされた。
支援のポイント
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介護保険未取得の段階でも、医療的な支援を先行させた点
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体調の大きな変化がなくとも、「生活に揺らぎがある」という家族の感覚を重視
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投薬方法の変更によるQOL維持と、家族の負担軽減の両立を模索
考察
「通院はできているが、何となく気がかり」といった段階でも、訪問診療は入りうる。
生活の変化は、家族の言葉にならない不安として先に表れることもある。
本事例のように、明確な急変がなくとも訪問診療を導入することで、生活の実態を医療的に可視化でき、適切な次の一手(入院や施設入所)を判断しやすくなる。
付記情報
疾患種別:呼吸器疾患、悪性腫瘍(経過観察中)
病名:気管支喘息、肺小細胞がん(放射線治療後)、慢性呼吸苦
医療処置:在宅酸素療法(HOT)、薬剤変更(吸入・内服→貼付剤・エアロゾル)
エリア:愛知県あま市
生活環境:長男夫婦との3人暮らし。日中は独居状態になることも多い
医療負担割合:医療1割負担(介護保険は新規申請中)
専門医介入:通院歴あり(詳細記載なし)
公費負担医療:記載なし(該当不明)
障害者手帳・認定情報:記載なし(該当不明)